昨日の FIM 2010 RTM Update 2 のリリースに含まれる ECMA 2.0 に合わせて Web Services コネクタ(SAP)のベータ版が Connect サイトにリリースされています。
- コネクトサイト
https://connect.microsoft.com/site433/Downloads
ECMA 2.0 からこれまでの Management Agent ではなく Connector という様に呼び名が変わっています。これはこれまでの管理エージェント(MA)に当たる部分(MetaVerse との同期部分、Connector Space、対象システムとの同期部分)のうち、共通化できる部分はなるべく共通化し、システム固有の部分を独立させよう、というコンセプトによるもので、これまでの管理エージェントのうち、対象システムとの同期部分に取り出したような作りになります。
結果、若干管理エージェント開発の負荷は減りましたが、逆に Web Service の設定を行うために別のツール( Web Service Configurator )を使うことになります。
流石に手元に SAP の環境がないので、実際の接続を試すことはできそうにありませんが、今後の共通パーツになるであろう Web Service Configurator の操作イメージなどはこれから試してみようと思うので、そのうち blog でも紹介させてもらおうと思います。
2012年2月29日水曜日
FIM 2010 Update Rollup 2 がリリース
今ちょうど MVP Global Summit 2012 に参加するためにシアトルに来ているのですが、そんな最中 FIM 2010 の Update Rollup 2 がリリースされました。
Microsoft Update を経由して「重要な更新」として提供されるため、既存の FIM ユーザは適用が推奨されます。
修正内容は以下の通りです。
・ECMA 2.0 ( Extensible Connectivity Management Agent 2.0 Framework ) のサポート
・動的グループメンバシップや条件ベースのセットメンバシップにおける特定環境下におけるパフォーマンス問題の改善
・先の HotFix での SQL ワイルドカード問題のリバート(もとに戻りました)
・その他の問題の解消
※ダウンロードおよび詳細は以下 URL から。
http://support.microsoft.com/kb/2635086/en-us
大きな点としては、議論を呼んだ先の HotFix の内容を元に戻した点とついに ECMA 2.0 を正式にリリースした点ですね。
先のポストでも紹介しましたが、今後の MA はすべて ECMA 2.0 ベースで開発されることになると思われますので、早い段階で新しい MA の考え方に慣れ親しんでおいた方が良いかと思います。
Global Summit の内容そのものは NDA なので何も書けませんが、情報がオープンになったものから順番に今後も紹介していきます。
ではでは。(時差で眠い)
2012年2月15日水曜日
[FIM2010]ユーザ作成時に属性のユニーク性をチェックする
Forefront Identity Manager 2010 (FIM2010) の小ネタシリーズです。
デフォルト状態では FIM ポータルでユーザを作成する際、キー属性となるアカウント名の重複のチェックは全属性を入力してサブミットした時に初めて実施されます。管理者はエラーが出て初めてアカウント名の重複に気が付くのであまり作業効率は良くありません。
#指定したアカウント名がすでに存在する状態でユーザを作成するとサブミット後に以下のエラーが出る
そこで今回は属性の値を入力した段階でユニーク性を確認する、という設定を入れてみたいと思います。
FIM ポータル上でのリソース(ユーザやセキュリティ・グループ、管理ポリシールールなど管理・設定対象となる全てのオブジェクト)の構成するための画面を構成するのは「リソースコントロールの表示構成(Resource Control Display Configration / RCDC)」と言われる設定です。
では、早速設定してみます。
管理者で FIM ポータルへログインし、管理メニューより「リソースコントロールの表示構成」を選択します。
今回はユーザを作成する際に属性のユニーク性を確認したいので、RCDC の一覧から「ユーザーの作成の構成」を選択します。
するとユーザの作成を行う画面の構成情報が表示されるので、まずは現在の構成情報をエクスポートします。
構成情報が XML ファイルとして出力されるので、その中の AccountName 属性に関するブロック(<my:Control my:Name="AccountName" ~で始まるブロック)の中に以下の行を追記します。
<my:Property my:Name="UniquenessValidationXPath" my:Value="/Person[AccountName='%VALUE%' and not(ObjectID='%ObjectID%')]" />
編集した XML ファイルを保存し、再度 RCDC の構成画面から今度はインポートします。
最後に iisreset コマンドで IIS を再起動します。
これで設定は終了です。
先ほどと同様にユーザを作成してみます。
すると、今度は[次へ]をクリックした段階で属性のユニーク性が確認され、エラーとしてハイライトされます。
RCDC の設定次第では他にも色々とカスタマイズが出来るので今後も小ネタを公開していこうと思います。
参考資料:
http://technet.microsoft.com/en-us/library/ee534918(v=ws.10).aspx
2012年2月5日日曜日
アイデンティティ・プロバイダにおける身元保証と岩波書店の縁故採用宣言
たまには時事ネタも、ということで。
岩波書店が2012年度の採用を縁故採用に限る、という宣言をしたことが賛否両論を呼んでいますね。
岩波書店の採用ページ
http://www.iwanami.co.jp/company/index_s.html
色々な意見があるのは確かだと思いますので、ここでは特に何の意見も述べるつもりはないので、少しだけWeb上の反応を紹介しておきます。
(私の周りには結構肯定的な意見が多いかも)
・雑種路線でいこう
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20120204/p1
・常識的に考えた
http://blog.livedoor.jp/jyoushiki43/archives/51836165.html
・ドラゴンの抽斗
http://ameblo.jp/nitta-ryo/entry-11153856843.html
で、ここからアイデンティティの話(およびサービスプロバイダの話)です。
先日の Kantara Initiative Seminar 2012 Winter でも Japan WG 議長の山田さんが紹介していましたが、現在 Kantara Initiative が生き残りを賭けて?力を注いでいるのが Identity Assurance Framework です。
※山田さんの講演資料はこちら:
http://kantarainitiative.org/confluence/pages/viewpage.action?pageId=57606150
背景を含め簡単に説明すると、、、
特にパブリック・クラウドなど事業者をまたがってサービスを使う様な場合、「サービス・プロバイダの信頼」というものが非常に重要になってきます。
※これまでこの blog で紹介してきた AD FS2.0 などで言う証明書を使った信頼関係の実装とはレイヤが違う意味での「信頼」です。事業者同士の信頼をITシステムの中で表現するための一つの方法が証明書ベースでのIdP/RP間の信頼です。
例えば、アプリケーションを提供する側としては、外部のアイデンティティ・プロバイダからの認証結果や属性情報を受け入れるには普通に考えて結構な覚悟が要るはずです。本当に認証は正しく実行されているんだろうか?パスワードが漏れていて実際は本人以外の人がアカウントを使っているんじゃないだろうか?実は退職した後でもアカウントが消されていなくて不正利用をされているんじゃないだろうか?など考えただけで色々な懸念があるはずです。
また、逆にアイデンティティ・プロバイダ側からすると利用したいアプリケーション・サービスが本当に大丈夫なのか?については同様に気を使います。管理レベルが低くて提供したメールアドレスなどの属性情報をリスト化してスパム業者に売り払っているんじゃないだろうか?作成したデータを盗み見られているんじゃないだろうか?などなど、こちらも多くの懸念があります。
こうなってくると「何を持ってアイデンティティ・プロバイダ、サービス・プロバイダを信頼するか」の基準の確立が非常に大切になってきます。これを「トラスト・フレームワーク」と言います。
現在、Kantara Initiative は Open Identity Exchange(OIX)と並んでポリシー策定者である米国調達庁(GSA/ICAM)の認定したトラスト・フレームワーク・プロバイダとなっています。
GSA が行う電子調達においては OIX や Kantara Initiative が認定したアイデンティティ・プロバイダで認証された利用者 / 企業であることが必要となります。
ちょっと話がそれましたが、このトラスト・フレームワークの認定基準を見るとアイデンティティ・プロバイダ、サービス・プロバイダで事業に従事する人員の採用に関する要件についても規定されています。
Kantara Initiative Identity Assurance Framework
Identity Assurance Framework:Service Assessment Criteria
LoA2 ( Level of Assurance 2 )
AL2_CO_OPN#030 Personnel recruitment
Demonstrate that it has defined practices for the selection, evaluation, and contracting of all service-related personnel, both direct employees and those whose services are provided by third parties.
LoA3/4 ( Level of Assurance 3/4 )
AL3_CO_OPN#030/AL4_CO_OPN#030 Personnel recruitment
Demonstrate that it has defined practices for the selection, vetting, and contracting of all service-related personnel, both direct employees and those whose services are provided by third parties. Full records of all searches and supporting evidence of qualifications and past employment must be kept for the duration of the individual's employment plus the longest lifespan of any credential issued under the Service Policy.
特に LoA3や4(信頼レベル高)ともなると過去の従事者が資格を満たしていることのエビデンスや雇用履歴の調査など、かなり厳密な管理が必要となります。
それもそのはず、例えばイギリスでは LoA4 を要求するサービスとして生命や医療、国防にかかわるサービスをあげていたりします。
Kantara Initiative の他にも Cloud Security Alliance(CSA)でも Cloud Control Matrix(CCM)を定めており、その中にも従事者の採用に関する項目が規定されています。
CSA / Cloud Control Matrix(CCM)
https://cloudsecurityalliance.org/research/ccm/
HR-01
Pursuant to local laws, regulations, ethics and contractual constraints all employment candidates, contractors and third parties will be subject to background verification proportional to the data classification to be accessed, the business requirements and acceptable risk.
HR-02
Prior to granting individuals physical or logical access to facilities, systems or data, employees, contractors, third party users and tenants and/or customers shall contractually agree and sign equivalent terms and conditions regarding information security responsibilities in employment or service contract.
HR-03
Roles and responsibilities for performing employment termination or change in employment procedures shall be assigned, documented and communicated.
特に HR-01 では身元確認の重要性を強調しています。
色々と書きましたが、岩波書店の話に戻すと特に公共性の高いサービスにおいては「身元のしっかりした人を採用する」ことの重要性が認識され始めているのかも知れません。
しかし、これには色々と問題があるのも確かで、特にプライバシーの観点から見ると過去の犯罪歴や家族構成などが原因で仕事に就けない、といった事象を生む可能性も否めません。
※この辺りは崎村さんの blog で。
http://www.sakimura.org/2010/12/686/
クラウドを含め単一の企業ネットワークに閉じた境界防御ではなく複数の事業者にまたがるビジネス・スキームが主流になってくると必ず話題に上る、いわゆる「セキュリティ vs プライバシー」の議論の典型的な例だと思いますので、岩波書店の例に関する結果がどうなるのか?は要ウォッチかも知れません。