2024年5月28日火曜日

政策提言「デジタル・ニッポン2024」を見ていく(3)

こんにちは、富士榮です。

引き続き自民党の政策提言「デジタル・ニッポン2024」を読んでいきます。そろそろ前半も佳境といったところで、デジタルIDやトラストをやっている人には一番大切な「信頼性の確保はいかにして可能か」というテーマに踏み込んでいきます。このタイトルでまるまる一つの章を使っているのは素晴らしいと思います。そのくらい深淵かつ重要なテーマだと思います。



早速見ていきます。

8. 信頼性の確保はいかにして可能か

データ連携については、信頼性の確保が大前提となる。個人情報のような例でもわかるように、データの取扱いに関する信頼が本人から寄託されなければならない。また、データ処理に関する信頼性の問題もある。データをやりとりする者の間で相互の信頼がなければデータの円滑な流通は成立しない。データ戦略における信頼の問題を論じるため、ここでは信頼の要素としてプロセスとガバナンスの観点に着目したい。

非常に重要なリード文ですね。まさにData Free Flow with Trustです。

データ自体の信頼は当然の話としてやり取りする当事者の間での相互信頼に着目している点や、プロセスに加えてガバナンスについても触れられているのは非常に重要なポイントです。

ここからプロセスとガバナンスに関する信頼の話がそれぞれ解説されています。

8.1. プロセスに対する信頼

利用されるデータ、利用されるシステムであるためには、信頼されるプロセスが必要である。ユーザ体験(UX)の向上は、インタフェースにとどまらず、プロセスに対する信頼によって実現することを改めて確認しておきたい。ユーザがサービスの改善に期待するからこそサービスは利用され続ける

もう当たり前だけど実践ができていないシステムばかりで拍手しかないですね。CIAMの設計をするときもUXの向上がドロップ率に大きく関係するわけですし、それを含め信頼だよね、って話を昔々にConsumer Identity Worldがシンガポールで開催された時にKuppingerColeのアナリストが話をしていたのが思い起こされます。

マイナンバー推進に当たっては、政府も透明性の確保の一環として⾃己の個人情報がどのようにやりとりしているのか知ることができる機能がマイナポータルに実装されている。

あえてノーコメントで。。プロセスの透明性とUXだけでユーザがついてくるのか?という課題を投げつけられた気がします。この辺りは後半のガバナンスの話との関連も大いにあると思います。

(中略)

ビジネスや行政⼿続等の場面では、データ連携がどのような⼿順で行われるのか、どのくらい時間がかかるのか、ユーザの期待を裏切ればサービスに対する嫌悪感が高まる。また、ユーザの声が改善に生かされているという実体験も重要である。これはシステムに対する信頼や正統性(legitimacy)の確保が、その学習の過程に依存することにも由来する。よりよいユーザ体験が、システムへの信頼を醸成しプロセスそのものに正統性を与える。プロセス指向のデータ戦略においても、このシステムへの信頼が前提となる。 

これは本当に公共システムには特に求められることではないかと思いますね。もちろん公共であるが故に全てのユーザの声が反映されるのは事実上不可能でしょうが、この考え方は今後も失わずにいてもらいたいものです。

また、ユーザにとって普段から慣れ親しんだサービスであることは、安心感を高める要素となる。防災 DXPT では、能登半島地震の教訓も踏まえて、マイナンバーカードの活用や防災訓練における机上訓練(TTX)の重要性を指摘している。これらは平時にサービスやシステムを普及させることが、非常時の対応において重要であることを示している。また、マイナンバーカードの保険証利用も、マイナンバーカードに親しんでもらいシステムへの信頼が体験を通じて醸成されることが普及の鍵になる。

若干、鶏・卵的な話にもなりがちですが、特に防災について普段通りの行動の中でどこまで対応できるのか?は非常に重要だと思います。そのためのマイナンバーカードの保険証利用かというともちろんone of themだとは思いますが、いずれにしてもちゃんと使い慣れておくことは大事ですね。

政府をはじめサービス提供者は、使いやすい仕組みを制度・技術一体で構築することはもちろん、ユーザの予見可能性を向上させるため、内部プロセスからインタフェースに至るまで、平時・非常時といったフェーズに関係なく、ユーザに見える部分・見えない部分に関わらず、改善し続ける姿勢に徹すべきである。このような地道な取組が、国⺠やユーザの信頼を高める近道となる。

ただでさえバイアスがかかる世界なので特に行政サービスにおける努力はみえようがみえまいが本当に大切ですね。別のところで信頼を下げてしまっているって話もありますが、運営側の努力には頭が下がります。


次回はガバナンスについて見ていこうと思います。

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