2024年9月1日日曜日

SIDI Hub - ケープタウンレポートを読む(1)

こんにちは、富士榮です。

前回紹介した通りSIDI Hubのイベントレポートが公開されているのでみていきます。

今回はケープタウンのレポートをみていきましょう。



前段部分はSIDI Hubの概要の話なのでケープタウンのイベントレポートの部分だけ見れば良さそうです。

まずは概要から。

SIDI Hub Cape Town was held on May 20, 2024, before ID4Africa. Throughout the day, there were 40+ attending with roughly 30% representing government, 30% representing the research community, 25% representing the organizing non-profits, and 15% representing transnational organizations. The focus was on eliciting feedback from the representatives from African nations and intergovernmental bodies in attendance. In turn, this feedback will serve as inputs to the SIDI Workstreams. In particular, the agenda was designed to generate insights about:

- Use Cases that are particularly pertinent to the African continent and its communities

- The role that Trust Frameworks and Trust Framework analysis could play in supporting their national or, in the case of refugees, trans-national identity systems

In the mid-afternoon, representatives from African identity systems left for another event and the agenda shifted to emphasize academic questions, since there was also heavy representation from researchers. While section Two of this report includes the detailed Rapporteurs notes for the full day event, key take-aways are highlighted below.

2024年5月20日、ID4Africaの前にSIDI Hub Cape Townが開催された。一日を通して40人以上が参加し、およそ30%が政府代表、30%が研究コミュニティ代表、25%が組織的な非営利団体代表、15%が多国籍組織代表だった。焦点は、出席したアフリカ諸国や政府間機関の代表からフィードバックを引き出すことだった。このフィードバックがSIDIワークストリームへのインプットとなる。特に、アジェンダは以下のような洞察を生み出すようデザインされた:

- アフリカ大陸とそのコミュニティにとって特に適切なユースケース

- トラスト・フレームワークとトラスト・フレームワーク分析が、国内または難民の場合、国を超えた ID システムを支援する上で果たしうる役割

午後の半ばになると、アフリカのアイデンティティ・システムの代表者たちは別のイベントに向かった。アジェンダは学術的な質問に重点を置いたものに変わった。研究者の参加も多かったからである。本報告書の第2章には、終日開催されたイベントの詳細な報告者ノートが掲載されている。本報告書の第2章には、終日のイベントの詳細な報告者のメモが掲載されているが、主要な要点は以下の通りである。

アフリカならではのユースケースを探る良い機会になったようですね。特に大陸で地続き、かつ旧来の民族や文化が欧米の都合などで分断された歴史があったり、その後も紛争などによる難民や飢饉の発生など、デジタル文脈でできることは多いんだと想像できます。


次にKey takewaysとして以下が挙げられています。

Global Use Cases have a Local Context

While the representatives from the African continent recognized and embraced the consolidated set of use cases (compiled with publicly available inputs from the W3C, EU Digital Identity Wallet, EU/US bilateral analysis, and other workshops), there was a great deal of discussion about how those use cases applied and could be experienced differently in local communities.

For example, a use case called “cross-border trade” emerged and related specifically to individuals who lived near a border and crossed it regularly to conduct trade.

グローバルなユースケースにはローカルな文脈がある

アフリカ大陸の代表者は、統合されたユースケース(W3C、EU デジタル ID ウォレット、 EU/US 二国間分析、およびその他のワークショップから公開されたインプットを使用して編集され た)を認識し、受け入れたが、これらのユースケースが地域コミュニティでどのように適用され、 異なる形で経験され得るかについて多くの議論が行われた。

たとえば、「国境を越えた貿易」と呼ばれるユースケースが浮上し、これは特に、国境付近に住 み、貿易を行うために定期的に国境を越えている個人に関連するものであった。 

この辺りは島国である日本ではあまり想像しにくいユースケースですが、国境と文化圏・経済圏が必ずしも一致しない環境においては重要なケースとなるはずです。

Governance and Trust Frameworks

Even though the concept of a “Trust Framework” does not necessarily translate directly to the National ID systems found in Africa, different elements of Trust Frameworks are found in local legislation, regulations, and other protections built into the systems. Additionally, these ID systems may require less in the way of Identity Assurance policy components (a major pillar of Trust Frameworks) because of the presence of a National ID. This could simplify translation of assurance across borders as long as that National ID is accepted, and the person can be authenticated. Further analysis will be required to map African ecosystems into the existing analysis conducted by the Open Identity Exchange.

ガバナンスとトラスト・フレームワーク

「トラスト・フレームワーク」の概念が必ずしもアフリカで見られる国民 ID 制度にそのまま当てはまらないとしても、トラスト・フレームワークのさまざまな要素は、現地の法律、規制、およびシステムに組み込まれたその他の保護の中に見られる。さらに、これらの ID システムでは、国民 ID が存在するため、(トラスト・フレームワークの主要な柱である) アイデンティティ保証政策コンポーネントの必要性が低くなる可能性がある。これにより、その国民 ID が受け入れられ、個人を認証できる限り、 国境を越えた保証の変換が単純化される可能性がある。アフリカのエコシステムを、Open Identity Exchange が実施した既存の分析にマッピング するには、さらなる分析が必要である。 

強力に統治される集権的な国民IDシステムとトラストフレームワークの両立は確かに難しい問題なのかもしれません。この辺りはもしかするとアフリカだけでなく中国をはじめとする共産圏、もしくは東南アジアの比較的新しく社会システムが構築された国々にも共通する話なのかもしれません。OIXが中心となってトラストフレームワークマッピングの活動を進めているので、他の国との相違点が見えてくるとこの辺りは面白いトピックスになりそうです。

Minimum Requirements

The Minimum Requirements workstream, built on an assumption that there would be no single architecture adopted worldwide, began to explore the options to enable different ecosystems to communicate. This revealed two topics to be reviewed in more depth in SIDI Hub Berlin: a set of architectural paradigms and an analysis of where the translation might take place.

最低限の要件

世界的に採用される単一のアーキテクチャは存在しないという前提に基づいて構築された最小要件ワークストリームは、異なるエコシステム間の通信を可能にするためのオプションの調査を開始しました。これにより、SIDI Hub Berlinでは、2つのトピックについてより詳細な検討を行う必要があることが明らかになりました。その2つのトピックとは、一連のアーキテクチャパラダイムと、翻訳がどこで行われるかについての分析です。

概要からは何を言っているのか分かりにくいですが、国や経済圏によってアーキテクチャのデザインは異なるので、システム間を接続するシステム(プロキシなど)による翻訳が必要になる、という議論が継続して進められています。この辺はベルリンでも話題になっていたのでそちらのまとめでもう少し詳細に。

Academia

The attendees expressed significant appetite for research about interoperability use cases, economic benefits, risks, security, and more. As a result of these conversations, the SIDI Hub community is exploring opportunities to develop a shared research agenda and collaborate with researchers and institutions to bridge these gaps.

学術界

出席者は、相互運用性のユースケース、経済的利益、リスク、セキュリティなどに関する研究に大きな関心を示しました。これらの会話の結果、SIDI Hubコミュニティは、共通の研究課題を策定し、研究者や研究機関と協力してこれらのギャップを埋める機会を模索しています。

SIDI Hubコミュニティの特徴として学術界からも多くの人々が参加してることが挙げられます。相互運用性を考える上ではどうしても現実的な課題解決にフォーカスしがちですが、真にグローバルで相互運用性があり持続可能なシステムを作るにはアカデミックなアプローチによる研究〜開発が必要となると思います。


とりあえずパート1はここまでで、この後は各セッションの詳細が書かれているので次回以降で見てみようと思います。

 

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