2024年11月17日日曜日

続々)リンク可能性、リンク不可能性の話

こんにちは、富士榮です。

引き続きWalletモデルを考える時のクレデンシャルのリンクの件についてみていきましょう。

元記事はSpruce IDのWayneのこの記事です。


これはFederationモデルとも当然共通ですが、リンク可能性には大きく2つのパターンがあります。一つはRP(Verifier)同士が結託するパターン、もう一つはIdP(Issuer)とRP(Verifier)が結託するパターンです。

まずはRP(Verifier)同士が結託するパターンです。

One goal for a verifiable digital credential system is that a credential can be used to present only the necessary facts in a particular situation, and nothing more. For instance, a VDC could prove to an age-restricted content website that someone is over a certain age, without revealing their address, date of birth, or full name. This ability to limit disclosures allows the use of functional identity, and it’s one big privacy advantage of a VDC system over today’s identity systems that store a complete scan of a passport or driver’s license. However, even with selective disclosure of data fields, it is possible to unintentionally have those presentations linkable if the same unique values are used across verifiers.

検証可能なデジタル資格情報システムにおける目標のひとつは、特定の状況において、資格情報は必要な事実のみを提示し、それ以上の提示は行わないというものです。例えば、年齢制限のあるコンテンツウェブサイトに対して、VDCは、住所、生年月日、フルネームを明らかにすることなく、ある人が一定の年齢以上であることを証明することができます。この開示を制限する能力により、機能的なIDの利用が可能となり、パスポートや運転免許証の完全なスキャン情報を保存する現在のIDシステムに比べ、VDCシステムのプライバシー保護の面で大きな利点となります。しかし、データフィールドを選択的に開示する場合でも、検証者間で同じ固有の値が使用されていると、意図せずにそれらの提示がリンク可能となる可能性があります。

In our example, if a user proves their age to access an age-restricted content website (henceforth referred to simply as “content website”), and then later verifies their name at a bank, both interactions may run the risk of revealing more information than the user wanted if the content website and bank colluded by comparing common data elements they received. Although a check for “over 18 years old” and a name don’t have any apparent overlap, there are technical implementation details such as digital signatures and signing keys that, when reused across interactions, can create a smoking gun.

この例では、ユーザーが年齢制限のあるコンテンツ・ウェブサイト(以後、単に「コンテンツ・ウェブサイト」と呼ぶ)にアクセスするために年齢を証明し、その後、銀行で名前を確認した場合、コンテンツ・ウェブサイトと銀行が受け取った共通のデータ要素を比較することで結託すれば、両方のインタラクションで、ユーザーが望んだ以上の情報が明らかになる危険性がある。18歳以上」のチェックと名前には明らかな重複はないが、デジタル署名や署名キーのような技術的な実装の詳細があり、それが相互作用を超えて再利用されると、決定的な証拠を作り出す可能性がある。

Notably, the same digital signature is uniquely distinguishable, and also new signatures made from the same user key can be correlated. This can all work against the user to reveal more information than intended.

特筆すべきは、同じデジタル署名は一意に区別され、また同じユーザー・キーから作成された新しい署名は相関することができることである。これはすべてユーザーに不利に働き、意図した以上の情報を明らかにする可能性がある。

これまではPairwiseによる識別子の紐付けを中心に考えてきていたわけですが、デジタル署名による紐付けが問題になってきています。


こういうことですね。

数年前にIIWで初めてSD-JWTの話を聞いた時に、この質問をTorstenにしてみたんですが、まだその段階ではリンク可能性についてはそこまで大きなトピックスになっていませんでした。まずは選択的情報開示がちゃんとできるようにならないといけないよね、という。

ようやくここまで議論がすすんだなぁ、というところです。


次回もこの辺りを引き続き深掘りしていきます。


 

 

 

 

 


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