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2024年9月24日火曜日

Apple Walletで選択的情報開示

こんにちは、富士榮です。

最近、Google WalletやApple Walletに免許証やパスポートが次々と搭載されてきているわけですが、選択的情報開示のUIがようやく見えてきました。

参考)これまでの記事


今回、カリフォルニア州のモバイル運転免許証がApple Walletに搭載されるというニュースを見ると選択的情報開示の動画イメージが掲載されています。

アナウンス
https://www.dmv.ca.gov/portal/california-mdl/apple-wallet/

年齢証明を求めるシナリオです。


Age Over 21という形で21歳以上であることが提示される、という感じになります。



Verifierからの要求に対して全体として提示する・しないの実装となってしまうのは仕方ないんでしょうが、こんな感じで選択的情報開示のUIが実装されてくることが見えてきました。

Age Verificationは良いシナリオである一方で国によって成人年齢が異なるということもあるので、うまく国によって実装が使い分けられるようになっていると良いですね。この辺りがどうなっているのかもう少し調べてみようかと思いました。(確かできた気がするので)

ちなみに国別の成人年齢の一覧をMicrosoftがリストにしてくれているので参考までに。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/active-directory-b2c/manage-user-access

2024年9月17日火曜日

Google Walletと選択的情報開示

こんにちは、富士榮です。

先日、「選択的情報開示とウォレットと本人確認書類」というタイトルで投稿しました。


内容としては、本人確認書類をデジタル化するならば選択的情報開示を含めデジタル化をすることによるメリットがちゃんと見えるようにならないといけないよね〜という話だったわけですが、昨日も触れたGoogle Walletの記事には今後のロードマップが明示されています。

How we're working to make digital identity a reality for everyone



要するに安心してGoogle Walletなどのアイデンティティソリューションを利用するためにGoogleが取り組んでいることについて書かれたポストですが、その中に選択的情報開示に関して記載があります。

Selective disclosure and user control: With digital identity, the relying party (a party requesting information, for example a car rental company or a merchant) is able to request only the relevant parts of a person’s ID. Today, if you’re presenting your physical ID (for example to confirm your age or your address) you have to share everything — your name, address, your physical description and more. However, with a digital ID, you can share only the required data. Additionally, you must authenticate the device with a fingerprint, PIN or passcode in order for any of your ID information to be shared with the requester.

選択的開示とユーザー制御:デジタル ID では、依拠当事者(情報を要求する当事者、たとえばレンタカー会社や商業者)は、個人の ID の関連部分のみを要求することができる。現在、物理的なIDを提示する場合(たとえば年齢や住所を確認する場合)、氏名、住所、身体的特徴など、すべてを共有しなければならない。しかし、デジタルIDでは、必要なデータのみを共有することができる。さらに、あなたのID情報を要求者と共有するためには、指紋、PIN、パスコードでデバイスを認証する必要があります。 


選択的情報開示のUXがどうなるのか気になりますが、個人的な意見としてはリライングパーティが全体ではなく最低限の要求ができるようになるので、ウォレットとしてはそのリクエストに対応できるようにするよ、という話だけでは全然足りない気がしています。(実装する立場としては理解できますが)

あくまでユーザの意思によって開示する情報を選択できるという体験が重要だと思うので、リライングパーティがどんな属性を要求してきているかに関わらず、自身で開示する属性を選べる状態にはなっていないといけないと思います。(結果的にリライングパーティの要求を満たさなかったとしても)

また、オフラインでの利用についても考慮をしていってもらえるといいなぁ、、と思います。たとえば、画面を見せる際に検証者の目線では「これは正式な書類である」ということが視認できる状態が重要なので、表面は正式な証明書であることが視認できるだけ、タップして裏面を見せるとユーザがあらかじめ設定した開示したい最低限の情報だけが記載されている、という状態が作れるといいのではないかと思います。


いずれにしても3rdパーティウォレットを含むエコシステムが正常に出来上がるような規制などは政府が中心に整備してもらえるといいですね。ユーザーの声を正しく吸い上げるためにもAppleとGoogleだけに任せるのではなく、エコシステム全体として進化できていくことが重要な気がします。

2024年8月16日金曜日

選択的開示に関するReview論文を読む(7)

こんにちは、富士榮です。


引き続き選択的開示に関する調査論文を読んでいきます。

Selective disclosure in digital credentials: A review

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405959524000614


今回は研究と実装の間に、、、という話です。


論文中には研究の対象となっている選択的開示技術と社会実装における各種規制などとのギャップについて記載があります。

例えばGDPRとCRPA(記載時点ではCCPA)などを鑑みると選択的情報開示の実装には以下の要件が求められると書かれています。

  • Disclosing attributes from at least two separate credentials issued by the same or different issuers;
  • Proving disclosed attributes belong to the subject presenting them;
  • Ensuring disclosed attributes are unlinkable from multiple presentation sessions;
  • Proving that disclosed attributes belong to the appropriate credential.
  • 同一または異なる発行者によって発行された少なくとも2つの別個のクレデンシャルから属性を開示すること。
  • 開示された属性が提示した対象に属することを証明すること。
  • 開示された属性が複数の提示セッションからリンクできないことを保証すること。
  • 開示された属性が適切なクレデンシャルに属することを証明すること。
本論文で分析した対象の中には要件を達成しているものもあるが全く考慮されていないものも存在している、ということです。
要するに要件が整理されてくるより前に要素技術の研究が始まって自由に仕様を作っていっていた、ということなんでしょう。。

同じく実装を見ると以下のようなギャップに関しても指摘されています。
  • Balancing privacy with transparency — one of the biggest challenges is balancing the need for privacy with the requirements for transparency;
  • Regulatory compliance — as laws evolve, ensuring that technology complies with international, federal, and national regulations is becoming increasingly complex;
  • Security risks — implementing selective disclosure increases the complexity of the encryption system, potentially introducing new vulnerabilities;
  • Scalability and efficiency — certain solutions may need to be more scalable and efficient for widespread use. There is a need for a more robust system that can handle large volumes of data.
  • プライバシーと透明性のバランス — 最大の課題のひとつは、プライバシーの必要性と透明性の要件のバランスを取ることです。
  • 規制への準拠 — 法規制の進化に伴い、テクノロジーが国際的、連邦、および国家レベルの規制に準拠することはますます複雑化しています。
  • セキュリティリスク — 選択的開示を実施すると、暗号化システムの複雑性が増し、新たな脆弱性が潜在的に生じる可能性があります。
  • 拡張性と効率性 — 特定のソリューションは、より広範な用途に利用できるよう、より拡張性と効率性を高める必要があるかもしれません。 大量のデータを処理できる、より強固なシステムが必要です。

確かに3つ目の実装の複雑性がますことでセキュリティ・リスクが高まる、という視点はあるなぁ、、と思ってみていました。
SAMLの脆弱性の話など、どうしても頑張って実装する必要がある仕様って、仕様は正しいんだけど実装で間違える、ってことが起きがちですね。

また、PQCの話も重要な点として指摘されています。
署名ベースの場合は、アルゴリズムの強度を考えないとポスト量子セキュアとは言えませんね。


いよいよ次は結論というかまとめの部分です。