2011年11月19日土曜日

Office365 ディレクトリ同期ツールの64bit版がリリース


長らく課題だった「Office365のディレクトリ同期ツールが32bit環境でしか動作しない」件にようやく決着がつきました。
参考)以前のポスト:ディレクトリ同期ツールを使って Office365 へのユーザ同期を行う

中身は9月のセミナで少し話したようにILM2007FPベースからFIM2010ベースになったようです。
ネタ元:http://msgeneral.blogspot.com/2011/11/64-bit-support-directory.html
     http://community.office365.com/en-us/w/sso/555.aspx


ダウンロードは管理ポータルからできます。












しかし、11/19現在日本語版のディレクトリ同期ツールのダウンロードが出来ません。サポートに通報しておいたのでそのうちダウンロード出来る様になるとは思いますが。。。
# 11/26 正常にダウンロード出来る様になったのを確認しました。




















尚、32bit版からのアップグレードですが、当然64bitOS上で動くので新規に64bitの環境を用意する必要がありますので、そのままアップグレードすることはできません。新規に64bit版をインストール・設定するときは32bit版の同期ツールをアンインストールする(もしくは止めておく)ことが必要です。
モジュールが入手できるようになったらもうちょっと詳しく試してみたいと思います。

これであとはFIM2010用の独立した管理エージェントとしてのリリースがされれば念願のマルチフォレスト対応なども実現すると思いますので、引き続き要ウォッチです。

2011年11月4日金曜日

AD FS2.0 トレーニングコース プレビュー会に行ってきました

ついに日本でも AD FS2.0 のトレーニングコースが11月末から始まります。
今日はコース内容のレビュー会に行ってきました。 

内容としては、AD FS2.0 というかアイデンティティ・フェデレーションとはどういうものなのか?から始まり、AD FS2.0 の実装方法、WIF を使った簡単なクレーム・ベースのアプリケーションの作成、 SharePoint 2010 および Office 365 との実際の連携、トラブルシューティングの方法の紹介を実際の環境を使ってハンズオン形式で体験する、というものです。 

主催:クリエ・イルミネート
コース名:ADFS 2.0 による ID フェデレーションの実装
http://www.crie-illuminate.jp/Pages/CourseList/CI511-H.aspx

講師は Directory Service の MVP として有名な国井さんです。

通常3日間のコースを MS 安納さんをはじめ、Directory Service の MVP や SharePoint 、 Office365 の MVP で1日で集中的に試す、という会だったので色々な意味で「濃い」会でした。

また、トレーニング教材が400ページにおよぶ大作!で国井さんが TEC や Oxford Computer Group のトレーニングなど、実際に足を運んで調査をしてきた集大成となっているので、この資料を見るだけでもかなり勉強になります。

プレビュー会で使った資料の目次は公開しても OK ということなので写真を載せておきます。
これから Office365 のオンプレミス連携を計画している方はぜひとも受講してみてはいかがでしょうか?


































































































































































2011年11月1日火曜日

Office365 の Cloud Control Matrix への対応

英語版では少し前(6月)にリリースされていた Office365 の Cloud Control Matrix ( CCM ) への対応に関するドキュメント「Request for Information (情報提供依頼書) に対する標準的なレスポンス - セキュリティおよびプライバシー」の日本語版が10月末にリリースされました。

- ダウンロード URL
 http://www.microsoft.com/downloads/ja-jp/details.aspx?FamilyID=6dd73e12-95d9-4834-98b4-49bd65a85cbe

で、CCM って何よ?という人のために簡単に解説しておくと、以前も紹介したことのある Cloud Security Alliance ( CSA ) という団体が出しているコントロール・フレームワークで、以下の様に説明されています。

The CSA CCM provides a controls framework that gives detailed understanding of security concepts and principles that are aligned to the Cloud Security Alliance guidance in 13 domains. The foundations of the Cloud Security Alliance Controls Matrix rest on its customized relationship to other industry-accepted security standards, regulations, and controls frameworks such as the ISO 27001/27002, ISACA COBIT, PCI, NIST, Jericho Forum and NERC CIP and will augment or provide internal control direction for SAS 70 attestations provided by cloud providers.

簡単に要約すると、これまた別に CSA が出しているセキュリティ・ガイダンスの13のドメインに沿った形で、且つ業界標準であるISO27001/27002やCOBIT、PCI DSS、HIPPAなどとの関係性を含めて各種コントロール仕様をまとめたもの、ということです。
中を見るとわかりますが、 NIST のサービスデリバリモデル( SaaS / PaaS / IaaS ) 毎の適用有無、およびサービスプロバイダ / テナント別の適用有無などかなり詳細にまとまっている資料です。

CSA ガイドラインの13ドメインの中の12番目が「Identity and Access Management」だったり何故か Identity and Access Management に関してだけ別冊があったり、と CSA の中でもアイデンティティ管理はかなり重要視されている領域なので、もちろんこの CCM の中にもアイデンティティ管理に関連する項目が登場します。

先の Office365 での適用状況について少しピックアップしてみたので、紹介してみたいと思います。
(ちなみにベースとなっているのは CCM 1.1 Final 2010/12/17版の様です。現在は1.2が出ています)


  • HR-03 人事 -  雇用の終了
    • 要求
      • 雇用手続きにおいて雇用の終了や変更を行う際の役割や責任に関して、割り当て、文書化、コミュニケーションを行う必要があります。
    • 対応
      • 従業員の雇用終了プロセスは、Microsoft 米国本社の人事ポリシーによって行われます。 
      • 当社がお客様のアカウントを作成することはありません。お客様自身が、Microsoft Online 管理センターで直接アカウントを作成するか、またはローカルの Active Directory 内にアカウントを作成します。それらのアカウントは、Microsoft Online Services と同期することができます。そのため、作成するユーザー アカウントの正確性については、お客様がその責任を負います。
  • IS-07 情報セキュリティ - ユーザー アクセス ポリシー
    • 要求
      • アプリケーション、データベース、サーバー、ネットワーク インフラストラクチャへの通常のアクセス権および特権付きのアクセス権を付与/無効化するためのユーザー アクセスに関するポリシーと手順を文書化し、承認し、実装する必要があります。これは、ビジネス、セキュリティ、コンプライアンス、サービス レベル契約 (SLA) の要件に準拠している必要があります。
    • 対応
      • アクセス制御ポリシーはポリシー全体を構成するコンポーネントの 1 つであり、正式な確認および更新のプロセスが適用されます。Microsoft Online Services の資産に対するアクセス権は、ビジネス要件に基づいて、資産の所有者の承認を得たうえで付与されます。加えて、以下の項目が適用されます。
      • 資産に対するアクセス権は、知る必要性のある人間に限定する原則、および最小特権の原則に基づいて付与されます。
      • 適用可能であれば、役割ベースのアクセス制御を使用して、個人ではなく、特定の職務または責任領域に対して論理的なアクセス権を割り当てます。
      • 物理的および論理的なアクセス制御ポリシーは、規格に準拠します。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 11) で、"アクセス制御" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。 
  • IS-08 情報セキュリティ - ユーザー アクセスの制限/承認
    • 要求
      • アプリケーション、システム、データベース、ネットワーク構成、および機密度の高いデータや機能に対する通常のユーザー アクセス権や特権付きのユーザー アクセス権は制限される必要があります。また、それらのアクセス権を付与する前に管理者によって承認される必要があります。
    • 対応
      • アクセス制御ポリシーはポリシー全体を構成するコンポーネントの 1 つであり、正式な確認および更新のプロセスが適用されます。Microsoft Online Services の資産に対するアクセス権は、ビジネス要件に基づいて、資産の所有者の承認を得たうえで付与されます。加えて、以下の項目が適用されます。
      • 資産に対するアクセス権は、知る必要性のある人間に限定する原則、および最小特権の原則に基づいて付与されます。
      • 適用可能であれば、役割ベースのアクセス制御を使用して、個人ではなく、特定の職務または責任領域に対して論理的なアクセス権を割り当てます。
      • 物理的および論理的なアクセス制御ポリシーは、規格に準拠します。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 11.2) で、"ユーザー アクセスの管理と特権の管理" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。  
  • IS-09 情報セキュリティ - ユーザー アクセスの無効化
    • 要求
      • 従業員、契約業者、顧客、ビジネス パートナー、またはサード パーティの状況に何らかの変更があった場合に、組織のシステム、情報資産、およびデータに対するユーザー アクセスの準備解除、無効化、変更のタイムリーな実行を実装する必要があります。こうした状況の変化には、雇用、契約、または合意の終了、雇用状態の変更、組織内での異動などが含まれます。
    • 対応
      • 管理者、およびアプリケーションやデータの所有者は、誰がアクセスしているかを定期的に確認する責任を負います。オンラインのさまざまな場所で、アクセスをチェックするためのツールを入手できます。適切なアクセスの準備が行われていることを検証するために、定期的にアクセスの確認監査が行われます。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 8.3.3) で、"アクセス権の削除" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。 
  • IS-10 情報セキュリティ - ユーザー アクセスの確認
    • 要求
      • すべてのレベルのユーザー アクセスは、管理者によって計画された間隔で確認され、文書化されます。アクセス違反が見つかった場合は、文書化されているアクセス制御に関するポリシーと手順に従って改善策を実行する必要があります。
    • 対応
      • 管理者、およびアプリケーションやデータの所有者は、誰がアクセスしているかを定期的に確認する責任を負います。オンラインのさまざまな場所で、アクセスをチェックするためのツールを入手できます。Microsoft Online では、提供しているサービスの中でお客様がエンド ユーザーによるアクセスの監査と委任を行うための強化された機能を用意しています。詳細については、対応するサービスの説明を参照してください。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 11.2) で、"ユーザー アクセスの管理と特権の管理" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。  
  • IS-15 情報セキュリティ - 職務分離
    • 要求
      • 職務の適切な分離を実施、保証するためのポリシー、プロセス、手順を実装する必要があります。興味の制約に関するユーザーの役割の競合が発生する場合は、組織の情報資産の承認されない変更や意図しない変更、または誤使用によって生じるリスクを軽減するための技術的な制御を行う必要があります。
    • 対応
      • Office 365 サービスは、異なるホスティング サービスの開発スタッフ、運用スタッフが職務分離の原則に従うことを必要とします。これにはソース コード、ビルド サーバー、および運用環境に対するアクセス制御が含まれます。例:
        • Office 365 サービスの運用環境に対するアクセスは運用担当者に制限されます。開発チームとテスト チームには、運用環境内から提供された情報に対してアクセス権が与えられる場合があり、問題のトラブルシューティングに役立てることができます。
        • Office 365 サービスのソース コード管理に対するアクセスは開発担当者に制限され、運用担当者がソース コードを変更することはできません。
      • マイクロソフトの担当者は、マルチテナント環境の委託が行われる前にサーバーを構築します。サーバーの構築が完了すると、構築チームは自身のアクセス許可を削除します。サーバーを委託した時点から、マイクロソフトの担当者が委託されたサーバー上で実行されるシステムへのアクセス許可を得ることができる方法は限られています。ヘルプ デスクのスタッフは、アクセスを求めるサービス チケットの直接の結果として、またはソフトウェアのインストールや問題解決のためのシステム更新の直接の結果として、アクセス権を入手する場合があります。このような場合、監査ログによって、誰がいつログインしたかが示されます。マイクロソフトが採用しているプロセスは、保持している認定に準拠しています。
      • 不正行為、誤使用、またはエラーの可能性を最小限に抑えるため、Microsoft Online Services の環境内の機密度の高い機能や重要な機能に対して、職務の分離が実装されています。                     
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 10.1.3) で、"職務の分離" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。
  • SA-02 セキュリティ アーキテクチャー - ユーザー ID 資格情報
    • 要求
      • アプリケーション、データベース、サーバーおよびネットワーク インフラストラクチャにユーザー資格情報およびパスワード制御を (自動化を通じて) 実装および実施します。この場合、以下の最低条件を満たす必要があります。
        • パスワードをリセットする前にユーザー ID を検証する。
        • ユーザー以外の人物 (管理者など) がパスワードのリセットを行った場合、ユーザーが最初に使用する際にパスワードを即座に変更する必要がある。
        • 契約終了となったユーザーのアクセスの無効化をタイムリーに行う。
        • 少なくとも 90 日ごとに、非アクティブなユーザー アカウントを削除または無効にする。
        • 一意のユーザー ID を使用し、グループ、共有、または汎用のアカウントおよびパスワードを禁止する。
        • パスワードの有効期限を 90 日以内にする。
        • パスワードの最小文字数を 7 文字以上にする。
        • 数字とアルファベットの両方を含んだ強力なパスワードを使用する。
        • パスワードの再使用は、少なくとも 4 つのパスワードが使用された後に許可する。
        • ユーザー ID をロックアウトする試行回数は、多くても 6 回までにする。
        • ユーザー ID のロックアウト期間は最低 30 分にするか、管理者がユーザー ID を有効にするまでとする。
        • セッション アイドル時間が 15 分以上経過した場合に、端末を再度アクティブにするには、パスワードを再入力するようにする。
        • 特権付きのアクセスに対するユーザー アクティビティ ログを保持する。
    • 対応
      • Microsoft Online Services では、Active Directory を使用して、パスワード ポリシーの適用状況を管理しています。Microsoft Online Services システムは、強制的にユーザーに複雑なパスワードを使用させるように構成されています。パスワードには最長の有効期限と最小文字数が割り当てられます。
      • Microsoft Online Services が所有されている環境または運用されている環境に関連サービスまたはシステムを導入する場合、その前に契約者提供の既定のパスワードを変更することが、パスワードの取り扱い要件に含まれています。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 11.2.1 および 11.2.3) で、"ユーザー パスワードの管理およびユーザー登録" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。  
  • SA-07 セキュリティ アーキテクチャー - リモート ユーザーの多要素認証
    • 要求
      • すべてのリモート ユーザー アクセスに対して多要素認証が必要です。
      • 高い保証を必要とする操作には、どの形式の認証を使用しますか。これには、管理インターフェイスへのログイン、キー作成、複数のユーザー アカウントへのアクセス、ファイアウォール構成、リモート アクセスなどが含まれます。
      • ファイアウォールなど、インフラストラクチャ内の重要なコンポーネントを管理する場合に、2 要素認証が使用されていますか。
    • 対応
      • スタッフおよび契約業者のスタッフによる Microsoft Online Services の運用環境へのアクセスは、厳しく制御されています。
      • ターミナル サービス サーバーは、高度な暗号化設定を使用するように構成されています。
      • マイクロソフトのユーザーには、リモート アクセス セッションを確立するために、有効な証明書と有効なドメイン アカウントが含まれているスマートカードが Microsoft Online Services から発行されます。
      • ISO 27001 規格 (具体的には付属文書 A の項 11.4.2) で、"外部接続に対するマイクロソフトのユーザー認証" が規定されています。詳細については、マイクロソフトが認定を取得し、公開されている ISO 規格を確認することをお勧めします。 


関連する項目を抜粋しただけですが結構なボリュームになりますね。これもライフサイクル管理、アクセス制御、認証、職務分掌など様々な角度での要求への対応を行っているためだと言うことが出来ます。

実際に内情がどうなっているかは別として各パブリック・クラウド事業者はこのようなガイドラインへの対応度合を利用者からはかなり厳しくみられる傾向にあるので、今回のように公開文書という形での対応を含め色々と対策を打ってきているように感じます。特にOffice365やGoogleAppsなどはメールやグループウェアという形でかなりの生情報をクラウド上へ配置することになるので、利用者の不安を払しょくすることが最大のポイントになりがちです。
同じような対応をプライベート・クラウドで行おうと思うと結構難しいような気もしますので、国内のクラウド事業者も色々と苦労があるんでしょうね。。と遠い目をしてしまいます。

2011年10月13日木曜日

AD FS2.0 Rollup 1 は Office 365 を強く意識


RTW がリリースされてから1年半程度が経過した AD FS 2.0 ですが、Rollup 1 が現地の 10/12 にリリースされました。

サポートページ:Description of Update Rollup 1 for Active Directory Federation Services (AD FS) 2.0

http://support.microsoft.com/kb/2607496


内容は bug fix の他、Office 365 との連携を強く意識した幾つかの機能拡張がされています。
追加されたのは以下の 4 つの機能で、いずれも AD FS Proxy を公開することを含め( Outlook からの Office 365 アクセスに利用するため )、Office 365 を使うための機能拡張と言えそうです。

  • Multiple Issuer Support
    • これまで、複数のトップレベルドメインが存在する環境( UPN 属性が複数設定されている環境 )で Office 365 / AD FS 2.0 連携を行う場合は各ドメインの単位に AD FS 2.0 サーバを配置する必要がありましたが、この機能拡張により 1台のサーバで対応できる様になりました。まだ検証はしていませんが動きとしてはユーザの UPN 属性によって発行するトークンの Issuer を動的に書き換えるような動きをするそうです。
  • Client Access Policy Support
    • これも Office 365 に絡む話ですが、 Office 365 へアクセスをネットワークの場所などで制限することができる様になっています。例えば、社外からのアクセスをする場合は Office 365 へのアクセスを不可にする、等といった制限ができるようです。
  • Congestion Avoidance Algorithm
    • 特に外部に AD FS Proxy を公開することを意識した機能だと思われますが、高負荷時に認証リクエストの数をしぼることでサービス停止を防ぐための機能を実装しています。
  • Additional AD FS 2.0 performance counters
    • トークン発行要求の数や、認証に失敗した数などがパフォーマンスカウンターで確認できる様になりました。

最近は大企業でも Office 365 / AD FS 2.0 の導入事例が増えてきているようなので、これらの機能の実装で AD FS 2.0 もようやく実用に足るものとなって来たと言えそうです。

2011年10月12日水曜日

salesforce.com summer'11 の JIT Provisioning を試してみる

salesforce.com の summer'11 版の新機能で Just In Time Provisioning(JIT Provisioning)が追加されているのを発見したのでちょっとAD FS2.0との連携動作を確認してみました。

■JIT Provisioning とは
試してみる前にまず、JIT Provisioning とはなんなのか?を簡単に解説しておきます。

一言で言うと「SAML 等の Assertion からユーザを On the Fly で作成する」ということです。これまで一般的にシステムへのシングルサインオンをする前提はそのシステムに「あらかじめ」ユーザが作成されていることが必要でした。しかし、クラウド上のシステムへあらかじめユーザを作成する=クラウド上にユーザ情報をある程度持たせる必要がある、という点に抵抗感があったり、あくまでオンプレミスとクラウドの間で疎なシステム結合を行いたい、というニーズに対して登場してきたのが JIT Provisioning です。 動作としては、例えばSAMLでのシングルサインオンを行うような場合に、IdP から発行されるセキュリティトークンの中にある Assertion (クレーム)を元にユーザを作成する、という動きです。

・従来のプロビジョニング~シングルサインオン






















・JIT プロビジョニング~シングルサインオン




■salesforce.com における JIT Provisioning 設定

では、早速設定を確認してみます。

まずは salesforce.com 側の設定です。今回は force.com を使っていますが、基本的な設定は salesforce.com でも同様です。

基本的な設定方法は以前 @IT に書いた記事を参考に実施をして行くことになります。
 Windowsで構築する、クラウド・サービスと社内システムのSSO環境 第3回  http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/operation/adfs2sso03/adfs2sso03_04.html


記事と異なる点は以下の通りです。

・salesforce 側のシングルサインオン設定  

 Force.com のセキュリティ設定の中のシングルサインオン設定で、以下を設定します。  
 ・ユーザプロビジョニングの有効化:チェック  
 ・SAML のユーザ ID 種別:アサーションには、ユーザオブジェクトの統合 ID が含まれます












・プロファイルの作成  

 JIT Provisioning の前提として、SAML アサーションの Attribute フィールドの中に最低でも  
 ・Username  
 ・Email  
 ・LastName  
 ・ProfileId
 が入っている必要があります。  
 参考)http://login.salesforce.com/help/doc/en/sso_jit_requirements.htm

 UserName や Email などはわかりやすい属性なので、特にこの段階で意識をする必要はありませんが、 ProfileId だけは force.com の管理画面からも見ることが出来ません。(本来は 00ex0000001pBNL などといった識別子のようです)頑張ってAPEX等でコードを書いて実際のIDを取得しても良いのですが、敷居が高いので同じ属性にプロファイル名を入れると force.com 側で勝手に ID へ変換してくれるので今回はそちらを使います。

 ただ、ビルトインのプロファイル名( Force.com - Free User など)はうまく識別をしてくれなかったので、今回は新たに単純に「 User 」という名前のプロファイルを作りました。( Force.com - Free User をテンプレートとして作成したので内容は全く同じです)















・AD FS2.0 側のクレーム発行ルール

 次に AD FS2.0 側ですが、通常の SSO 設定と同様に Active Directory の UPN やメールアドレスを NameIdentifier に入れてあげる点に加え、上記にも書いた JIT Provisioning に必要な各属性に関するルールの記述が必要です。

 その際に、各属性名のプレフィックスに「 User. 」をつけてあげる必要があります。  具体的には、以下の様なマッピングを行います。
発行するクレームタイプデータソース
NameIdentifierActive DirectoryUPN or メールアドレス(今回は UPN を利用)
User.Usernameメールアドレス
User.Emailメールアドレス
User.LastName
User.ProfileId固定値「User」

 Username、Email、LastName についてのクレーム発行ルールはカスタムで以下の様に記述しています。

c:[Type == "http://schemas.microsoft.com/ws/2008/06/identity/claims/windowsaccountname", Issuer == "AD AUTHORITY"]
 => issue(store = "Active Directory", types = ("User.Username", "User.Email", "User.LastName"), query = ";mail,mail,sn;{0}", param = c.Value);


同様に、ProfileId については以下の様に記述しています。

 => issue(Type = "User.ProfileID", Value = "User", Properties["http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claimproperties/attributename"] = "urn:oasis:names:tc:SAML:2.0:attrname-format:unspecified");


■実際の動作確認

では、いよいよ動作を確認します。

まず、 force.com 側にあらかじめユーザが存在しないことを確認するためにユーザ一覧を見ておきます。














この状態で Active Directory 上に新規ユーザを作成し、AD FS2.0 で認証後、force.com へアクセスします。IdP Initiated ログオンをしますので、
 https://[AD FS2.0サーバ]/adfs/ls/idpinitiatedsignon.aspx?loginToRp=https://saml.salesforce.com
へのアクセスをします。

 - 新規ユーザ


- AD FS2.0 で認証

















すると、うまくいけばあらかじめプロビジョニングしているわけではないのに、force.com へログインできます。




















では、実際に force.com にユーザが作成されているかどうかを確認するために管理コンソールでユーザ一覧を見てみます。













見事にユーザが出来ています。


■ JIT Provisioning の利点と注意点

 この仕組みの最大の利点はあらかじめプロビジョニングをしておく必要がない= ID 管理システムの構築やアダプタの開発などをしなくても済む、という点です。

 反面、注意しなければならないポイントもあります。 例えば、
 ・ユーザの削除は手動でしなければならない
 ・利用者の数が予測しにくいのでライセンス管理が必要である
 ・ユーザ同士でのコラボレーションをしたくても相手が一度もログインしたことがなければシステム上にユーザが存在しないので情報共有などが出来ない
 などが挙げられます。

 このように万能ではありませんが、別の仕組みや運用と合わせてある程度のガバナンスを保ったうえで利用するには非常に有用な仕組みと言えると思います。

2011年10月6日木曜日

Omada Workflow Builder for FIM2010

先日は Microsoft による BHOLD 買収のニュースが FIM 界隈では騒がしかったのですが、BHOLD と並んで FIM のアドオン・ソリューションを販売している会社がこの OMADA です。

昔からこの会社は MIIS / ILM のアドオンや関連ツールを作っていたのですが、今回は FIM のワークフロー機能を活用するためのツール「Omada Workflow Builder for FIM 2010」をリリースしました。これも BHOLD の製品群と同じく FIM に不足している IAG(Identity and Access Governance)を実現するためのアドオンです。
プレス・リリースやデータ・シートを見ると、以下がポイントだそうです。

・Utilizes the workflow foundation in FIM to drive business processes
・Business workflows are launched in the FIM portal
・Built on native FIM elements such as sets, MPR's, and FIM objects
・Forms are web-based built on FIM 2010 RCDC's
・Data is stored in the FIM 2010 dynamic data model that stores the data for any request process in the dedicated object type in FIM 2010

また、特徴的な機能として以下が挙げられています。
・Graphical overview of workflow definition
・Automated publishing from central GUI into FIM 2010 facilitates deployment across Dev, Test, QA environments
・Automated business workflow validation
・Advanced business workflow configuration with loopback and dynamic rendering of forms based on tailored
process steps
・Escalation functionality with reminder emails
・Channelling of tasks for immediate feedback and acceptance from business users for fast prototyping
・Option of a variation of forms per FIM object
・Dynamic forms for task forwarding processes
・Forms handling incl. management of field validations
・Manual activities assigned to allocated users ? each
manual activity is supported by a tailored form
・Option to save tasks in draft state

基本的に FIM のワークフロー機能は Windows Workflow Foundation で構成されているので作ろうと思えばカスタム・ワークフローを作ることもできるのですが(というか特に日本のような環境ではほぼ確実にカスタマイズ)、このようにあらかじめ必要な機能が用意されていると確かに工数の削減や迅速なシステムの立ち上げを行うことも可能かもしれません。

BHOLD もそうですが、このように製品を補完する製品群を含めたエコシステムで成り立つ仕組みがもう少し日本でも出てくればなぁ、、と思ってしまいます。
日本のお客さんは保守サポートの一本化に関するニーズが強かったり、製品を複数買うことでライセンス費用がかさんだり、、と色々と問題はあるとは思いますが、、、orz

2011年10月1日土曜日

MVP Technical Expertise にようやく FIM が登場

マイクロソフトの MVP プログラムって4半期毎に新規募集・更新がかかるんですが、今回の募集(2012年1月期)からようやくカテゴリ名が Identity Lifecycle Manager から正式に Forefront Identity Manager という名前に変わったみたいです。
















MVP のプロフィールページを見るとちょっと前から Forefront Identity Manager の名前になってはいたのですが、募集時のカテゴリが正式に対応したのは今回からです。

もうすぐ日本の応募ページもオープンするみたいなので、ぜひw
http://www.microsoft.com/ja-jp/communities/mvp/selfregistration.aspx