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2020年5月2日土曜日

Azure ADの外部コラボレーションとBYOID

こんにちは、富士榮です。

リモートワークで組織外の方々とのコラボレーションが大きなテーマになっている方々も多いと思いますが、そういう時はAzure ADの外部連携(B2B)の機能ですよね。

そう言えばAzure ADのDirect FederationがGoogle以外にもSAML/ws-federationの外部IdPをサポートした、という会話をfacebookで某安納さんがしていたのを思い出したのと、先日 Alex Simons が色々と新しい機能が出たよ、というもはや個別の機能リリースの紹介だと無理だから一気にまとめて発表、みたいなポストをしていた中に、Azure AD B2CのSAMLサポートが正式リリースされた、という話があったので、もしやこれは繋がる???ということでやってみました。
いわゆるBYOD(Bring Your Own Identity)ってやつです。

当然、Azure ADのカスタムドメインを使った外部ID連携でも良いわけですが、この辺は後で比較をしてきます。


まず関連する記事、ドキュメント類を。


とりあえず完成イメージを

言葉で説明しても伝わりにくいと思うので、どういうことが出来るようになるのか?を動画にしています。
Azure AD B2Bで招待した外部ユーザでログインしようとすると、Azure AD B2Cにリダイレクトされ、LINEでログインすると、Azure ADにゲストユーザとして登録されてアプリケーションが使えるようになる、というシナリオです。


Azure AD B2CのSAMLサポート

先に書いた公式ドキュメント通りに設定していくと、Azure AD B2CがSAML IdPとして動作出来るようになります。(カスタムポリシーを使います。慣れると非常に簡単です)

大きな流れは以下の通りです。

Azure AD B2C側の設定
  • アサーション署名用の証明書(PFX)を作ってポリシーキーとしてアップロードする
  • ClaimsProviderとして、SAML2AssertionIssuerを作成する
    • MetadataにIssuerUriとして設定したものがIdPのEntityIDになります
    • CryptographicKeysに先にアップロードした証明書コンテナを指定するとアサーション署名をしてくれます(暗号化用証明書もアップロードすれば暗号化もできます)
こんな感じの設定になります。
<ClaimsProvider>
  <DisplayName>Token Issuer</DisplayName>
  <TechnicalProfiles>

    <!-- SAML Token Issuer technical profile -->
    <TechnicalProfile Id="Saml2AssertionIssuer_SAMPLE">
      <DisplayName>Token Issuer</DisplayName>
      <Protocol Name="SAML2"/>
      <OutputTokenFormat>SAML2</OutputTokenFormat>
      <Metadata>
        <Item Key="IssuerUri">https://nfpoc.b2clogin.com/nfpoc.onmicrosoft.com/B2C_1A_SI_SAML_SAMPLE</Item>
      </Metadata>
      <CryptographicKeys>
        <Key Id="MetadataSigning" StorageReferenceId="B2C_1A_samlsampleapp"/>
        <Key Id="SamlAssertionSigning" StorageReferenceId="B2C_1A_samlsampleapp"/>
        <Key Id="SamlMessageSigning" StorageReferenceId="B2C_1A_samlsampleapp"/>
      </CryptographicKeys>
      <InputClaims/>
      <OutputClaims/>
      <UseTechnicalProfileForSessionManagement ReferenceId="SM-Saml-issuer"/>
    </TechnicalProfile>

    <!-- Session management technical profile for SAML based tokens -->
    <TechnicalProfile Id="SM-Saml-issuer">
      <DisplayName>Session Management Provider</DisplayName>
      <Protocol Name="Proprietary" Handler="Web.TPEngine.SSO.SamlSSOSessionProvider, Web.TPEngine, Version=1.0.0.0, Culture=neutral, PublicKeyToken=null"/>
    </TechnicalProfile>
  </TechnicalProfiles>
</ClaimsProvider>


  • UserJourneyを定義する
    • この辺は通常のカスタムポリシーと同じです
  • RelyingPartyの定義を行う
    • 公式ドキュメントだとSAML SPに関するパラメータはAzure AD B2Cにアプリケーション定義を作ってマニフェストで設定する、ということになっていますが、Azure ADとB2Bとして連携する場合は、ちょっと工夫が必要です(後述します)

Azure AD側の設定

Azure ADの直接フェデレーションの設定を行います。
  • プロトコルはSAMLを選ぶ
  • IdPのドメイン名はSAML IdPの認証エンドポイントと同一ドメインである必要があるため、Azure AD B2Cのドメイン名(~.b2clogin.com)を指定する
  • 上記でAzure AD B2Cの設定が上手くいっていればSAML Metadataのダウンロードが出来るようになっていますので、保存したMetadataをアップロードして解析を行う
直接フェデレーションの設定画面。ここで「新しいSAML/WS-Fed IdP」を選びます。

こんな感じで設定します。



設定としては非常にシンプルです。
ただ、何点かクセがありますので、その部分を重点的に書いておきます。

設定のポイント

Azure AD B2Cのアプリケーション設定
  • ドキュメントを見ると、Azure AD B2Bと直接連携するためには以下の情報を設定する必要があることがわかります。
    • AssertionConsumerService
      • https://login.microsoftonline.com/login.srf
    • Audience(日本語ドキュメントだと「対象ユーザー」となっていますが。。。SAML SPのEntityIDのことです)
      • urn:federation:MicrosoftOnline
  • しかし、現状のAzure AD B2Cのアプリケーション登録ではカスタムスキームのAudience(urn:federation:MicrosoftOnline)をマニフェスト編集をしても登録することが出来ません。
  • ということで、SP(Azure AD)のMetadataを作って適当なところ(今回はbob)にアップロードし、カスタムポリシーから参照する形をとります。
こんな感じです。
<RelyingParty>
  <DefaultUserJourney ReferenceId="SI_SAML_SAMPLE" />
    <TechnicalProfile Id="PolicyProfile">
    <DisplayName>PolicyProfile</DisplayName>
    <Protocol Name="SAML2"/>
    <Metadata>
       <Item Key="PartnerEntity">https://nfpoccontent.blob.core.windows.net/root/aad_sp_meta.xml</Item>

手動で作ったSP Metadataはこんな感じです。単純にEntityIDとエンドポイントさえ書いてあれば最低限はOKです。

<?xml version="1.0"?>
<md:EntityDescriptor
    xmlns:md="urn:oasis:names:tc:SAML:2.0:metadata"
    xmlns:ds="http://www.w3.org/2000/09/xmldsig#"
    entityID="urn:federation:MicrosoftOnline"
    validUntil="2031-12-31T00:00:00.000Z">
  <md:SPSSODescriptor
    protocolSupportEnumeration="urn:oasis:names:tc:SAML:2.0:protocol">
    <md:SingleLogoutService Binding="urn:oasis:names:tc:SAML:2.0:bindings:HTTP-Redirect" Location="https://login.microsoftonline.com/login.srf"/>
    <md:AssertionConsumerService Binding="urn:oasis:names:tc:SAML:2.0:bindings:HTTP-POST" Location="https://login.microsoftonline.com/login.srf" index="0"/>
  </md:SPSSODescriptor>
</md:EntityDescriptor>

Azure AD B2CのSAML Metadata

  • 一応ドキュメントを漁ると出てくるのですが、見落としがちなので書いておきますが、以下のルールでMetadata URLが生成されます。
    • https://ドテナント名.b2clogin.com/テナント名.onmicrosoft.com/B2C_1A_ポリシー名/Samlp/metadata
Azure AD B2CからAzure ADへ渡す属性(SAML AssertionのAttributeStatement)

  • ドキュメントを見るとnameidがpersistentであること、emailaddressを属性として渡すこと、とありますので、それに合わせてAzure AD B2CのRelyingParty設定を行います。具体的にはOutputClaimsの設定です。
  • また、標準的なAzure AD B2CのSAML設定だと結構冗長な感じでAttributeStatementが書かれるので、TechnicalProfileのMetadataにSaml11AttributeEncodingInfo(Saml20~でもOK)を指定することで少しすっきりします。
こんな感じのRelyingParty定義になります。

<RelyingParty>
  <DefaultUserJourney ReferenceId="SI_SAML_SAMPLE" />
  <TechnicalProfile Id="PolicyProfile">
    <DisplayName>PolicyProfile</DisplayName>
      <Protocol Name="SAML2"/>
      <Metadata>
        <Item Key="PartnerEntity">https://nfpoccontent.blob.core.windows.net/root/aad_sp_meta.xml</Item>
        <Item Key="Saml11AttributeEncodingInfo">
          <![CDATA[
            <saml:AttributeStatement xmlns:saml="urn:oasis:names:tc:SAML:1.0:assertion">
            <saml:Attribute AttributeName="emailaddress" AttributeNamespace="http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims">
            <saml:AttributeValue>
            </saml:AttributeValue>
            </saml:AttributeStatement>]]></Item>
      </Metadata>
      <OutputClaims>
        <OutputClaim ClaimTypeReferenceId="objectId" PartnerClaimType="objectId"/>
        <OutputClaim ClaimTypeReferenceId="b2cmail" PartnerClaimType="http://schemas.xmlsoap.org/ws/2005/05/identity/claims/emailaddress" />
      </OutputClaims>
      <SubjectNamingInfo ClaimType="objectId" ExcludeAsClaim="true"/>
    </TechnicalProfile>
  </RelyingParty>
</TrustFrameworkPolicy>

ちなみにClaimType「b2cmail」は適当に適宜した属性なので自由に定義してもらえれば良いかと思います。重要なのは、「Azure AD B2Cのドメインと同じドメイン名を持つメールアドレスが設定されていること」です。例えば、hoge.b2clogin.comというAzure AD B2Cドメインを使っている場合は、fuga@hoge.b2clogin.comという値を返す必要があります。
※この辺りは早くAzure AD B2Cがカスタムドメインをサポートしてくれないと実利用するには辛いですね。

いざ、動作確認

設定はこれでおしまいです。
しかし、あくまでこれはAzure AD B2Bにおける「外部ユーザの招待において独自のパスワードを払い出さずに済ませるための機能(これ重要)」なので、あらかじめユーザを招待しておく必要があります。

ここは通常の招待と同じなので詳細は割愛しますが、Azure AD B2Cのドメインと同じドメインのユーザを指定して招待する、というところがポイントです。
つまり、メールは届きません。(少なくともb2clogin.comを使っている限り、一般人はこのドメインでメールは届かないと思います)

ただ、招待されている状態であれば招待元のアプリケーションにアクセスすれば招待の承認と同じことが起きますので、運用でカバーです。



そして、これも公式ドキュメントに記載されていますが、現状B2Bの直接フェデレーションはマルチテナントアプリケーションでのホームレルムディスカバリが使えないので、招待元ディレクトリのテナントIDやドメイン名が明示的に指定されているアプリケーションしか動きません。
例えば、

  • https://myapps.microsoft.comはダメ
  • https://myapps.microsoft.com/?tenantid=xxxxxxxxはOK
という感じです。


ここまで行けば、冒頭に動画で紹介した動きが再現できるはずです。
ちなみに動画内では条件付きアクセスを使ってゲストユーザの初回ログイン時に利用規約に同意させる様にしています。

カスタムドメイン単位でのフェデレーションと何が違うのか?

ここで疑問が出てくるのが、元々Azure ADにはカスタムドメイン単位で外部のSAML/WS-FederationのIdPと連携する機能があります。ちょっと前に多くの企業がAD FSをオンプレにおいてOffice365とSSOをやっていた構成ですね。

もちろんこのケースは社内ユーザを想定した話ですが、技術的に言うとB2Bの直接フェデレーションとほぼ変わりません。

ただ、細かく見るとちょっとずつ違います。
非常に雑な比較ですが、こんな感じです。

カスタムドメインのID連携B2Bの直接フェデレーション
フェデレーション単位ドメイン単位ドメイン単位
ユーザの管理あらかじめ作成が必要(Azure AD Connectでの同期など)
ImmutableIdでのマッチング
あらかじめ招待が必要
メールアドレスでのマッチング
アプリケーションの制限マルチテナントでも可
また、WS-Fedでwindowstranportエンドポイントの整備などの条件を満たせばWindows 10 PCログオンも可(Webサインイン設定不要)
マルチテナントアプリは不可
当然Windows 10 PCログインには使えない




ということで、実用的かどうかはユースケース次第というところですが、日々色々な機能が拡張されてきているな、というところです。



2017年11月27日月曜日

[AD FS]ログイン画面をAzure ADの新UIライクにカスタマイズする

こんにちは、富士榮です。

Azure Active Directoryのサインイン画面が新しいUIに変わったのに、AD FSはいつまでも昔のままというのは微妙だよね、ということでAD FSのログインUIをAzure ADに合わせるカスタムCSSが公開されています。

Using an Azure AD UX Web Theme in Active Directory Federation Services
https://docs.microsoft.com/en-us/windows-server/identity/ad-fs/operations/azure-ux-web-theme-in-ad-fs

早速試した先人のblog
https://msfreaks.wordpress.com/2017/11/19/adfs-new-sign-in-experience-added/

このドキュメントに従いgithubよりCSSをダウンロードし、AD FSのカスタムテーマを設定してみたいと思います。(Windows Server 2016のAD FS用、とありますが、2012R2でもちゃんと動いています。他のバージョンは試してませんが)

まずは旧UIです。お馴染みですね。

ちなみに、bingの画像をとってきて自動的にログイン画面の背景に使う、というスクリプトが公開されているので、こちらを使っています。

Automated Bing Wallpaper for ADFS 3.0 Themes
https://gallery.technet.microsoft.com/Automated-Bing-Wallpaper-c34136eb

先の手順に従ってカスタムテーマを設定していきます。
まずは、DefaultテーマのExportを行います。ちなみにこの手順が先のサイトでは省略されているのですが、必ず必要なので実施をしてください。この手順を飛ばすとonLoad.jsがないので背景が設定されません。

Export-AdfsWebTheme -Name Default -DirectoryPath C:\Style\default


次に、カスタムテーマを作成します。
必要なCSSや画像がダウンロード済みなことを確認し、以下を実行します。

New-AdfsWebTheme -Name custom -StyleSheet @{path="c:\style\ThemeCenterBrand.css"} -Illustration @{path="C:\Style\bing.png"} -AdditionalFileResource @{Uri='/adfs/portal/script/onload.js';path="c:\style\default\script\onload.js"}


後は、テーマを有効化すればOKです。

Set-AdfsWebConfig -ActiveThemeName custom


こんな感じになります。



ロゴなんかも変えるとこんなこともできますね。
カークとラーズが隠れてしまってますが・・・



2017年3月21日火曜日

[小ネタ]NAT構成のVMに構成されたAD FSへiOSデバイスを登録する

こんにちは、富士榮です。

今回は完全に小ネタというか自分用のメモです。

普段、BootcampなMacbook AirにWindows 10を入れ、その上でVMware Workstationを動かして、AD FSやMIMを動かして検証してるんですが、VMやAzureだけでクローズできないネタを検証する場合です。

具体的にはiOSやAndroidデバイスなどをAD FSへデバイス登録してデバイス認証をしたい場合、以下が困ります。
・JailbreakしていないiOSだとhosts登録が出来ない
・色々と事情があってVMをNAT構成で動かしているので母艦PC以外からVMへアクセスできない

ということで、対処してみます。

と、言ってもやることは母艦にApacheを立ててForward Proxyにするだけなんですが。

◆Apacheをダウンロードして構成する

Apacheの本家からWindows用のbinaryのダウンロードは出来なくなっているので、本家からリンクされているサイトからダウンロードをして使います。
 http://httpd.apache.org/docs/current/platform/windows.html#down

母艦がWindows 10 Pro x64なので、64bit版をダウンロードしてきました。バージョンは現時点の最新版な2.4.25です。

zipアーカイブを解凍したら少々コンフィグをいじくります。(conf\httpd.confを編集します)
ポイントは、

  1. パスを合わせる
  2. Proxyに必要なモジュールをロードする
  3. Forward Proxyとして構成する
  4. ServerNameをつける

の4点です。

では順番に。

1.パスを合わせる

 変更箇所はServerRoot、DocumentRoot、ScriptAlias、cgi-binのディレクトリ設定の4か所です。単にForward Proxyとして使うだけなので変更しなくても問題はありませんエラーが出るので。以下の5行が変更対象です。今回、C:\Tools\Apache以下にモジュールを展開したので環境に合わせて編集します。
ServerRoot "C:/Tools/Apache/Apache24"
DocumentRoot "C:/Tools/Apache/Apache24/htdocs"

    ScriptAlias /cgi-bin/ "C:/Tools/Apache/Apache24/cgi-bin/"

2.Proxyに必要なモジュールをロードする

 必要なモジュールのLoadModule行のコメントアウトを外します。今回AD FSを使うのでhttpsのフォワードも必要なのでmod_proxy_connectも使います。
LoadModule proxy_module modules/mod_proxy.so
LoadModule proxy_connect_module modules/mod_proxy_connect.so
LoadModule proxy_http_module modules/mod_proxy_http.so

3.Forward Proxyとして構成する

 非常に雑な構成ですが、httpd.confの最後に以下を追記します。

  ProxyRequests On
  ProxyVia On
  Listen 8080
  AllowCONNECT 443
 
    Order deny,allow
    Deny from all
    Allow from all
 

4.ServerNameをつける

 これはしなくてもいい設定ですが、Apacheの起動時にワーニングが出るのでとりあえず設定しておきます。

ServerName hoge:80

取り敢えずここまで設定したらOKなので、起動しておきます。
私の場合は検証したい時だけ立ち上げれば良いので、サービス化はせずにコマンドプロンプトから直接起動します。

binディレクトリ配下でhttpd.exeを起動するだけです。


◆母艦からアクセスできるようする(hostsファイルの構成など)

母艦経由でVMへアクセスさせたいので、まずは母艦からアクセス出来るようにネットワークを構成をしてあげる必要があります。

多くの場合、適当な名前(.localとか)でドメインを構成していたりするので、母艦のhostsファイルを使って適切にアクセスできるように構成する必要があります。

後は、念のため母艦からAD FSへアクセスできることを確認しておきましょう。


◆iOS側のProxy設定をする

最後にiOSのWifi設定でProxyサーバに母艦PCを指定します。
尚、当然の事ながら母艦PCへの8080ポートの通信をWindows Firewallで開放しておく必要があります。

iPhoneの設定からWifiを開き、母艦PCと同じアクセスポイントへ接続していることを確認したら、母艦PCのIPアドレスとProxyサーバとして指定した8080番を指定します。


設定はこれで終了です。

◆DRSへアクセスしてデバイス登録する

この状態でiPhoneからAD FSのデバイス登録サービス(DRS)へアクセスして、プロファイルがインストールされるか確認してみます。

DRSのアドレスは
 https://ADFSServer/EnrollmentServer/otaprofile
ですが、当然インターネットにしか繋がっていないiPhoneからVMで動いているAD FSへアクセスは出来ず、DRSへ到達できません。

しかし、今回母艦に立てたProxyを経由することでVM上のAD FSへアクセスでき、無事にプロファイルがインストールできます。



当然、デバイスクレームの取得もできるので、手元でアクセス制御のテストも行うことが出来ます。



まぁ、Azure上にIaaSを立ててインターネットからもアクセス出来るようにすればいいんでしょうが、iOSからアクセスできるようにちゃんとDNS登録が必要だったり、特にDRSの場合はenterpriseregistrationの名前が解決できる証明書を用意しなければいけなかったりするので、手元で済ませられれば手軽なのでこういう方法もありかな~と思っています。

2016年12月9日金曜日

[Azure AD] IE/Edge以外でAzure ADにSSOする(Desktop SSO)

こんにちは、富士榮です。

これまでAD FSとAzure ADを比較する際に重要なポイントの一つだったのが、PCへのログオンからブラウザ・アプリケーションへのシングルサインオンです。これをDesktop SSOと呼んでいます。

AD FSは統合Windows認証が利用できるので、ドメインネットワークではDesktop SSOが実現できましたが、Azure ADの場合はWindows 10でWindows Hello for Businessを使わないとDesktop SSOは実現できませんでした。

また、AD FSの場合はChromeやFirefoxなどIE/Edge以外のブラウザでもDesktop SSOを行う方法がありましたが、Windows Hello for Businessを使った場合はIE/Edge以外のブラウザでDesktop SSOを行うことはできませんでした。

参考)MVP渡辺元気さんのBlog : 「IE以外でADFSにSSOする」
    http://blog.o365mvp.com/2014/07/07/sso_adfs_without_ie_2012r2/


この課題を解決するために新たなAzure ADの機能「Desktop SSO」のプレビュー版として公開されました。

 公式アナウンス
  Enterprise Mobility and Security Blog
  Introducing #AzureAD Pass-Through Authentication and Seamless Single Sign-on
  https://blogs.technet.microsoft.com/enterprisemobility/2016/12/07/introducing-azuread-pass-through-authentication-and-seamless-single-sign-on/

 詳細ドキュメント
  https://docs.microsoft.com/en-us/azure/active-directory/active-directory-aadconnect-sso


 動作イメージ(公式ドキュメントより)

このAzure AD Desktop SSOを利用すると、Windows 7/8/8.1/10のPCにおいてChromeやFirefoxを使った場合でもシームレスにAzure AD連携しているアプリケーションへサインオンできるようになります。(Windows 7/8/8.1でIEを使った場合でもSSOできるようになります)


セットアップは簡単で最新版のAzure AD Connectを使い、

  • 認証方式に「Password Hash Sync」もしくは「Pass-Through Authentication」を設定する
  • イントラネットゾーンに以下の2つのURLを入れる
    • https://autologon.microsoftazuread-sso.com/
    • https://aadg.windows.net.nsatc.net/

の2つを行うだけです。

結果、こんな感じで動きます。
Azure ADのログイン画面でIDを入れるとパスワードを入れることなく自動的にサインインが行われます。



ますますAD FSを使わなくても実現できることが増えてきました。。。。

2016年9月28日水曜日

Windows Server 2016のリリースとハイブリッドID基盤

こんにちは、富士榮です。

アトランタで開催中のIgniteのタイミングに合わせてWindows Server 2016が正式にリリースされました。

 公式ブログでのアナウンス
 https://blogs.technet.microsoft.com/hybridcloud/2016/09/26/announcing-the-launch-of-windows-server-2016/

9月28日現在、評価版のダウンロードが先行して可能になっていますが、正式版の提供は10月に入ってからの様ですね。

と、いうことでとりあえず評価版をダウンロードしてセットアップし、ハイブリッドID基盤の構成を確認してみました。

以前Windows Server 2012R2のドメインコントローラとAzure AD、Windows 10を使って構成した構成ですね。

 [Windows 10/Azure AD]ハイブリッド環境におけるドメイン参加とシングルサインオン①
 http://idmlab.eidentity.jp/2016/01/windows-10azure-ad.html


結論から言うと特に変化点はありません。

以下のシナリオでいわゆるDesktop SSO(PCへのサインイン~ブラウザアプリケーションへのサインインがシームレスに行える)が実現できます。

- Windows 10へのサインインはPINで行われる
- ファイル共有へは従来通りKerberosで認証が行われる
- AD FSに関連づけられたアプリケーションへもKerberosで認証が行われる
- Azure ADに関連づけられたアプリケーションへはMicrosoft Passportで認証が行われる

軽く動画を撮ってみました。



ちなみに、このシナリオの中で1点Technical Preview 5のころのAD FSと異なるところは、ブラウザにEdgeを使ってもAD FSへのWindows統合認証ができるようになっているところです。

単純にWIASupportedUserAgentsにEdgeなどがデフォルトで追加されているだけですけどね。

PS C:\Users\Administrator> $a = (Get-AdfsProperties).WIASupportedUserAgents
PS C:\Users\Administrator> $a
MSAuthHost/1.0/In-Domain
MSIE 6.0
MSIE 7.0
MSIE 8.0
MSIE 9.0
MSIE 10.0
Trident/7.0
MSIPC
Windows Rights Management Client
MS_WorkFoldersClient
=~Windows\s*NT.*Edge

そして、Technical Previewから変わらずに残念だったのが、AD FSの認証方式にMicrosoft Passportが選択できるにも関わらず、ブラウザアプリケーションでのSSOシナリオでは相変わらず使えないところです。

ここは別途、もう少し詳しく状況を解説したいと思いますので、とりあえずPINでログインしてもAD FSに関連づけられたアプリケーションへはMicrosoft Passport認証ではなく、Windows統合認証でSSOするしか現状は無い、ということだけ覚えておいてください。



設定関係も簡単に動画に撮っています。



そのうちもう少し細かく解説を加えて、Channel 9の別館の方にもアップしたいと思います。


2016年8月22日月曜日

[SAML]Oracle CloudとのSSOを構成する~Azure AD(Premium)編

こんにちは、富士榮です。

前回に引き続きOracle Cloudとのシングルサインオンを構成していきます。今回はIdentity ProviderとしてAzure ADを使ってみます。

 参考:前回の記事)
   [SAML]Oracle CloudとのSSOを構成する~AD FS編
   http://idmlab.eidentity.jp/2016/08/samloracle-cloudssoad-fs.html


尚、基本的な考え方や構成は前回の記事で解説したものと変わりませんので、前回の記事を読んでいない方は、先に前回の記事を読んでください。

◆構成するにはAzure AD Premiumが必要

尚、初めに結論を書きますが、Oracle Cloudとのシングルサインオンを構成するには、タイトルにある通りAzure AD Premiumのライセンスが必要となります。

これまでも書いてきたとおりAzure AD自身は、無償版であってもSAMLのエンドポイントが使えるのでSAML SPとのシングルサインオンを構成することが出来ます。

ただ、現在のところ何故かOracle Cloudとのシングルサインオンは無償版では動作させることが出来ませんでした。(後述しますが、Oracle CloudのAssertion Consumer ServiceへSAMLアサーションをPOSTしたところでシステムエラーが出ます。私のやり方が悪いだけかもしれませんが、POSTされているSAMLアサーションの中身はAzure AD Premiumで構成したものと変わらないので、何が違うのかよくわかっていません)

では、早速構成してみます。

◆Azure ADへOracle CloudをSAML SPとして登録する

他のアプリケーションと同様にAzure ADのギャラリーからアプリケーションを追加し、Oracle CloudのSAMLに関連するパラメータを入力、SPとして登録を行います。



カスタムアプリケーションを追加します。

アプリケーションの作成が完了したら、シングルサインオンを構成します。
まずはシングルサインオンの構成としてAzure ADのシングルサインオンを選択します。


次に、Oracle Cloudの以下の情報を登録します。

EntityID : Oracle Cloudの識別子
Assertion Consumer Service URI : SAML AssertionをPOSTする先のURI

これらの情報はOracle CloudのSSO設定の中に記載されているので、コピー&ペーストします。

少しずつ言葉が違いますが、

  • EntityID=Oracle Cloud上の「プロバイダID」=Azure ADにセットする「識別子」
  • Assertion Consumer Service URI=Oracle Cloud上の「アサーションコンシューマーサービスURL」=Azure ADにセットする「応答URL」

です。



次に進むと、Azure ADに関する情報が表示されますので、メタデータのダウンロードをしておきます。ダウンロードが終わったら一番下のチェックボックスにチェックを入れてウィザードを終了させてしまっても大丈夫です。



◆Oracle CloudへAzure ADをSAML IdPとして登録する

次は、反対にOracle Cloud側へAzure ADを登録します。
SSOの構成ページを開き、先ほどダウンロードしたAzure ADのメタデータをアップロードします。


これで構成は完了です。


◆ユーザの割り当てとテスト

早速テストを行いますが、その前にAzure AD側でユーザの割り当てを行っておきます。もちろんOracle Cloud側にも対象のユーザを作っておく必要もあります。

Azure ADのアプリケーションの構成でユーザの割り当てを行います。


SSOの動作試験は前回の記事と同様にOracle CloudのSSO設定ページから行うことが出来ます。


Start SSOのボタンをクリックするとAzure ADのサインイン画面へリダイレクトされるので、ログインします。


ログインが完了するとOracle CloudへSAMLアサーションがPOSTされ、シングルサインオンが完了します。


◆他の属性マッピングのバリエーションを試す

Azure ADを使った場合もAD FSの場合と同様に他の属性を識別子にマッピングすることも可能です。

例えば、識別子を電子メールアドレスにし、NameIDに格納する場合は以下のような設定になります。尚、Azure ADではNameIDの値はUserPrincipalName(メールアドレス形式)でnameid-formatはemailaddressなので、AD FSの場合のようにカスタムプロパティの設定を行う必要はありません。


また、SAML属性に入っている値を識別子にマッピングする場合は以下のように設定します。
この場合も特別なマッピングルールを作ったりプロパティの設定を行う必要はありません。


全体にAD FSを使うよりも楽に設定できる感覚があります。



◆Azure AD Premiumがない場合はどうなるか?

冒頭に書いた通り、上記はAzure AD Premiumのライセンスを保持している場合の設定の方法です。(具体的にはPremiumライセンスがないと、ギャラリーからカスタムアプリケーションの追加が出来ません)

ただ、無償版であってもSAMLのエンドポイント自体は有効なので自力でSPを登録すれば、SAMLアプリケーションとのシングルサインオンを構成すること自体は可能です。
(現に、MS松崎さんがsimplesamlphpを使ったSPとの連携を無償版の機能だけで実現しています。関連ポストはこちら

しかし、Oracle Cloudで同様の手順を実施したところ、SAMLアサーションの発行まではうまくいきますが、Oracle CloudのAssertion Consumer Serviceがうまくアサーションを受け取ってくれませんでした。

これは推測ですが、SAML SSOエンドポイントアドレスがPremiumでのカスタムアプリケーション追加で作成した場合はlogin.windows.net、無償版で作った場合はlogin.microsoftonline.comとなっており、自動的にリダイレクトされるので差異はないと思うのですが、微妙な機能差があるのかもしれません。(無償版のメタデータのエンドポイントをwindows.netに書き換えても同じエラーになるので違うのかもしれませんが)


参考までに手順と結果を載せておきます。(ここが間違ってるよ!という情報などあればぜひ!!)

まずはアプリケーションの追加をしますが、ギャラリーからではなく、組織で開発中のアプリケーションを選択します。

アプリケーションの種類はWebアプリケーションにします。


アプリケーションのプロパティには以下をセットします。

  • サインオンURL : Oracle CloudのアサーションコンシューマサービスのURL
  • アプリケーションID/URI : Oracle CloudのプロバイダID



次に、Oracle Cloud側にAzure ADの情報を設定しますが、ギャラリーからのアプリケーション追加ではないので、メタデータをウィザードから取得することが出来ません。
そこで、画面の下部にあるエンドポイントメニューよりFederationMetadataを取得し、Oracle Cloudへアップロードします。

このURLへアクセスし、表示されるXMLを保存します。




設定はこれで終わりなので、先ほどと同じ手順でテストをします。
尚、この手順で作成した場合はデフォルトではAzure AD側でのユーザ割り当ては不要です。

Start SSOをクリックすると同じくAzure ADのログイン画面へリダイレクトされます。


サインインすると、Oracle CloudのアサーションコンシューマサービスへSAMLアサーションがPOSTされますが、システムエラーが出てしまいます。


普通にOracle Access Managerなんですね。
SAML Tracerで上記のPremiumを使ったうまくいくパターンと無償版を使った失敗するパターンの両方のSAMLアサーションをトレースしてみたんですが、変わった点は見当たらず、何が原因なのかはよくわかっていません。
Oracle Cloud側へのAzure ADの情報登録もメタデータを使わず手動で構成したり、メタデータの不要な部分の削除など色々と試してはいるのですが、今のところ解決の糸口はつかめず。。。


◆まとめ

AD FSを使った場合に比べ、Azure ADをIdPとして使った場合は簡単に構成することが出来ます。しかし、以下の注意点があります。

  • Azure AD Premiumライセンスが必要
  • Azure ADのログインIDはUserPrincipalNameなのでOracle CloudのログインIDとマッピングする際は値のフォーマットを合わせる必要がある






2016年4月28日木曜日

[AD FS/Windows Server 2016]Microsoft Passportがやってきた

こんにちは、富士榮です。

昨日よりWindows Server 2016の新しいプレビュー版のTechnical Preview 5が公開されていますので、早速AD FS周りを見てみました。
(今回は触りだけです)

一番の変更点は「認証方法にMicrosoft Passportが選択できるようになっている!!」ことです。

これで、ようやくハイブリッド構成においてもMicrosoft Passportを使ったデバイス・ブラウザ間のシングルサインオンが実現できるようになります。

このイメージ+Federation構成ですね。(MVP Comcampで使った資料より)
http://www.slideshare.net/naohiro.fujie/azure-adwindows-10



取り敢えず今回は画面だけ紹介です。

認証方法の設定です。
初期状態でIntranetもExtranetもMicrosoft Passportが選択されています。

Editをクリックして詳細を見てみます。


これを使えば、これまでの社内からは統合Windows認証によるデバイス・ブラウザ間のSSO、社外からはフォーム認証(SSOなし)という使い分けではなく、社内・社外に問わないユーザ・エクスペリエンスが提供できるようになるので、非常に便利ですね。

2016年1月17日日曜日

[AD FS]連携アプリケーション毎に対応するIdPへ自動振り分けを行う

こんにちは、富士栄です。

AD FSを使ってアプリケーションとのID連携を行う場合、基本はビルトインのActive Directoryでの認証および属性の提供を行うことになりますが、アプリケーションが増えてきたり、複数の企業でAD FSを使ったりし始めると、AD FSをHUBのように使いたくなってきます。
(他にもプロトコルの変換を行うために使うケースなんかでもHUB的にAD FSを使いたくなります。例えばアプリケーションがws-federationにしか対応していなくて、IdPがSAMLにしか対応していないような場合とかですね。Windows Server 2016のAD FSではOpenID Connectにも対応してくるので、OpenID Connectにしか対応していないアプリケーションをSAMLしかしゃべれないIdPに統合するケースなど、AD FSをHUBとして使うケースも出てくるかもしれません)

そんな場合、AD FSに登録するIdP(Claim Provider)が複数になってしまいますので、利用者自身がどのIdPを使うのかを選択する必要が出てきます。(少なくとも初回は。2回目以降はCookieでブラウザに記憶されます)


AD FSに複数のClaim Providerが設定されているケースです。
下の画面ではビルトインのActive DirectoryとAzure ADを設定しています。

この環境でアプリケーションからAD FSにリダイレクトされるとIdPを選択する画面が表示されます。
これをHome Realm Discovery(HRD)と呼びます。


これって結構面倒くさいですよね。
利用者が間違ったIdPを選択してしまうと一旦Cookieをリセットしてもらって、、、ということにもなりますのでサポートしなければならない情報システム部門からすると非常に頭の痛い問題にもなりかねません。


ということで、例えば絶対に特定のIdPでしか認証させないアプリケーションであれば選択画面(HRD画面)をスキップして直接IdPへリダイレクトさせたいのですが、そういう場合はAD FSに少々設定を行うことで実現可能です。

具体的にはAD FSのPowerShellコマンドレッド「Set-AdfsRelyingPartyTrust」を使って対象のRelying Party(アプリケーション)が指定したClaim Provider(IdP)のみを使うように設定を行います。

構文は以下の通りです。
AdfsRelyingPartyTrust -TargetName <アプリケーション名(RP名)> -ClaimsProviderName <IdP名>


尚、複数のIdPを指定したい場合は、@("AAA","BBB")という形で配列を指定することで対応できます。

詳細は以下のURLにありますので、参考にしてください。
 https://technet.microsoft.com/en-us/library/dn280950.aspx


早速設定してみます。WLSという名前のアプリケーションはAzure ADのみを使って認証する、という設定です。

この状態で先ほどのアプリケーションに再度アクセスしてみます。
(Cookieをクリアしてからアクセスするのをお忘れなく)

選択画面(HRD)が出ずに直接Azure ADへリダイレクトされました。
これで多少なりとも混乱を防ぐことが出来ると思われます。


尚、間違えてClaim Providerを制限しすぎてしまったので元に戻したい、という場合は先と同じコマンドレットに他のClaim Providerを指定してあげれば大丈夫です。


2016年1月13日水曜日

[AD FS]JavaアプリSPとSAML Artifact Bindingで連携する際の証明書ストア

こんにちは、富士榮です。

小ネタです。
JavaでSAML SPとなるアプリケーションを開発した場合のSP⇒IdP間のバックエンド通信に使う証明書の登録に関するTIPSです。

◆SAML Arifact Bindingとは?

まず、SAML Artifact Bindingの通信フローのおさらいです。
簡単に言うと、POST Bindingではユーザのブラウザを経由してSAML AssertionをIdPからSPに渡すのに対して、Artifact Bindingでは認証後Artifactと言われるコードをユーザのブラウザを経由してSPへ渡し、SPはブラウザより受け取ったArtifactをIdPへ渡してSAML Assertionと交換する、という仕組みです。
ややこしいので、SPとIdPの間で直接の通信が行われるタイプのBindingと覚えておいてください。
OAuthやOpenID Connectがわかる人は、Code Flowと同じ考え方と理解すると早いかもしれません。

こんなイメージです。


昔はガラケーなどブラウザで扱えるデータサイズの問題があったので、SAML Assertionそのものをブラウザ経由でPOSTするのではなく、比較的サイズの小さいArtifactを使ってID連携をする必要があったのですが、最近は通信速度や端末性能の向上により、Artifact Bindingが使われることは減ってきています。SPとIdPの間で直接通信をさせなければならないので、クラウドサービスと社内IdPを連携させる場合などの通信の取り回しなども非常に面倒、というのも使われなくなってきた一因です。

ただ、今でもたまにArtifact Bindingしか使えないSAML SPが存在するので、仕方なく実装することがあります。(AD FSではArtifact Bindingをサポートしています。尚、Azure ADはPOST BindingのみなのでArtifact Bindingは使えません)


◆SPとIdP間のSSL通信に使う証明書の信頼設定

先述の通り、POST Bindingではすべての通信がブラウザを介して行われるため、SSL通信に使う証明書のチェックについてはブラウザが信頼している証明書であればなんの問題もありませんし、最悪オレオレ証明書でもユーザが警告を無視してくれさえすれば、ID連携することが可能でした。

しかし、Artifact BindingではSPとIdPの間でSSL通信をエラーなく成立させる必要があるので、SPがSSL通信に使う証明書を信頼している必要があります。

信頼をするための方法はミドルウェアによりさまざまで、例えばsimplesamlphpでは設定ファイルに通信で使う証明書が入っているストアを直接指定する、などの方法をとります。

今回は前回のポストで使ったWebLogic上にデプロイしたJavaアプリケーションの場合のTIPSです。
WebLogicが信頼する証明書ストアはサーバの構成よりキーストアの設定で設定・確認することが出来ます。


初期状態では、デモ用のキーストアおよびJava標準のキーストアが設定されていますので、このキーストアのどちらかにIdPがSSL通信で使う証明書がインストールされている必要がある、ということになります。

今回はAD FSをIdPとして使ったので、AD FSがSSL通信で使っている証明書をExportしてWebLogicが使うキーストアにインストールします。

まずは、AD FS管理コンソールより証明書を開き、Service Communicationに設定されている証明書を開き、DER encoded binary X.509(cer)形式でエクスポートします。

エクスポートしたcerファイルをSPにコピーし、以下のコマンドを実行して証明書ストアへインストールします。
keytool -keystore <ストアのファイル名> -importcert -file <証明書ファイル名>

こんな感じです。


これで、無事にSP⇒IdP間でSSL通信が成立するので、SAML Assertionの受け渡しが行えるようになります。








2015年11月28日土曜日

[AD FS]Windows Server 2016 Technical Preview 4/TokenエンドポイントのBASIC認証

こんにちは、富士榮です。

先日Windows Server 2016のTechnical Preview 4が出たので、AD FSがどうなったのかを見ていきたいと思います。

まずOpenID ConnectのRP(Relying Party)を作る上で個人的に一番気になっていたTokenエンドポイントのクライアント認証を見てみました。

一般的なRPの開発ドキュメントを見ているとOAuth2.0のCode Flowを使う際、code取得後にTokenエンドポイントへのPOST時のクライアント認証はBASIC認証で実装されていることが多いですし、RFCのサンプルもそうなっているのですが、Azure Active DirectoryやAD FSのTokenエンドポイントはBASIC認証をサポートしていませんでした。

Windows Server 2016ではこのあたりが改修されることになっており、前回のTechnical Preview 3の.well-known/openid-configurationを見ると以下のようにclient_secret_basicもサポートされていることがわかります。

"token_endpoint_auth_methods_supported":["client_secret_post","client_secret_basic","private_key_jwt","windows_client_authentication"],

しかし、Technical Preview 3で実際にTokenエンドポイントでBASIC認証を使おうとすると、invalid_clientと言われてHTTP 400が返ってきてしまいました。



ということで、今回出たTechnical Preview 4ではどこまで治ったのかを見てみます。
codeを取得した後、TokenエンドポイントへのPOST時のAuthorizationヘッダにclient_idとclient_secretを":"で接続してbase64エンコードした文字列をBasicに続けて設定します。

結果、いけました!



これでこれまで他のOpenID Provider向けに作ったクライアントをAD FS用に変更する必要がなくなりましたね。
ただ、現状までAzure ADはまだclient_secret_postとprivate_key_jwtしかサポートしていないみたいです。今後に期待ですね。。





2015年10月19日月曜日

[AzureAD]Azure AD Domain Servicesを使って既存サービスをクラウド上へ移行する際の注意事項

こんにちは、富士榮です。

先日パブリック・プレビューが公開されたAzure Active Directory Domain Services(Azure AD DS/AADDS)を使うことでオンプレミスのActive Directoryが提供してきたドメイン・サービス(ドメイン参加やグループポリシーなど)を、同一Azure VNET上のマシンに対して提供することが可能になりました。

公式blogでのアナウンス
 Azure AD Domain Services is now in Public Preview ? Use Azure AD as a cloud domain controller!
 http://blogs.technet.com/b/ad/archive/2015/10/14/azure-ad-domain-services-is-now-in-public-preview-use-azure-ad-as-a-cloud-based-domain-controller.aspx

尚、基本的なセットアップ方法や簡単な注意点についてはMicrosoft Regional Directorの亀渕さんが紹介しているので、そちらを参考にしてください。

ブチザッキ
 Azure Active Directory Domain Services (Public Preview)
 https://buchizo.wordpress.com/2015/10/15/azure-active-directory-domain-services-public-preview/



公式ドキュメントや亀渕さんのblogにも書かれているとおり、AADDSで提供されているドメインサービスには一部制限があります。
・サイトの構成やマルチフォレスト・マルチドメインなどのドメイン構成自体のカスタマイズはできない
・グループポリシーはビルトインのもののみで、カスタマイズができない
・直接ユーザやグループをMMCで管理できない
・管理者(ドメイン参加権限くらいしかない)はAAD DS Administratorsグループに入る
などなどです。


オンプレミスの既存サービスをクラウドへ持って行こうとすると、これらの制限によって少々困ることが出てくるので移行計画を立てる際は注意が必要です。

私が試していて特に困った点は「Domain Admins」権限をユーザに付与できない、という点です。
既存アプリケーションの中にはActive Directory上のオブジェクトを参照・更新するものもあり、それらのアプリケーションは多くの場合Domain Admins権限を要求します。
(アプリケーションの作りの問題ではありますが・・・)

ちなみにAzure AD DSのDomain Adminsにはdcaasadminというユーザが固定でメンバ登録されていますが、このユーザのパスワードがわからないので、なんともなりません。
もちろんこのユーザのパスワードを更新することはできないようになっていますし、Azure AD側への同期もされていません。



以下、Domain Admins権限を求める例です。

1.メンバサーバへのリモート・デスクトップ・ログイン
 これは回避策がありますが、サーバをAzure仮想マシンで構築し、Azure AD DSへ参加させた後、サーバへリモート・デスクトップでAzure AD DS上のユーザでログインしようとしても拒否されてしまいます。


 これはメンバサーバへのリモート・デスクトップ接続が初期状態でビルトインのAdministratorsのみに許可されているためです。Domain Adminsはドメインに参加した時点でビルトインAdministratorsグループに登録されるため、オンプレミス環境ではDomain Adminsのメンバでサーバを管理すれば特に困ることはありませんでした。

 ところが、Azure AD DSでは先述の通り、Domain Adminsは使えないので、まずはローカル・アカウントでログインし、コンピュータの管理からローカルのAdministratorsにリモート・デスクトップ接続したいユーザもしくはグループを追加する必要があります。



2.Domain Admins権限を要求するアプリケーションを導入する
 これは現状どうしようもありません。アプリケーションが固定でDomain Admins権限を要求してくるので、なんともなりません。

 例えば、Active Directory Federation Services(AD FS)などマイクロソフトのサービスはこの時点でほぼ全滅です。(この辺りはAzure ADを使えってことなんでしょうけど)




今後正式版がリリースされるまでにうまく回避策が出てくるといいですねぇ。。