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2024年6月18日火曜日

京都大学 学術情報メディアセンターセミナー「デジタルIDの最新動向」でお話します

こんにちは、富士榮です。

来週6月25日に京都大学の学術情報メディアセンターでデジタルIDについてお話しさせていただきます。


告知・申込サイト

会場はもちろん京都大学ですが、ハイブリッド形式での開催となるのでリモート視聴も可能です。
旧来のSAMLをベースとしてアカデミックフェデレーションの話からOpenID Connectへの道筋の話や、学術機関におけるトラストフレームワークの今後の話、学位・学修歴などのデジタルクレデンシャルの利活用へのシナリオの話など、80分でまるっとお話ししようと思います。
ぜひご参加ください。

こちらがアジェンダです。

◆16時30分~16時35分 オープニング

◆16時35分~17時05分
講演者:清水 さや子(国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系 助教)
講演題目:Persistent IDの可能性とオンライン本人確認システムの紹介
講演概要:組織で提供されるIDは、通常、入学や採用時に発行され、卒業や離職時には無効化されます。そのため、所属組織が変更されると、その時点で、新しいIDを利用することになります。一方で、研究データ基盤サービスなど、所属組織の異動に関係なく継続利用が求められるサービスも存在します。このようなケースに対しては、オンラインでの本人確認を利用したスムーズなID移行が期待されています。本セッションでは、Persistent IDの活用や、スムーズにID移行を支援するためのオンライン本人確認システムについて紹介します。

◆17時05分~18時25分
講演者:富士榮 尚寛(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社・みらい研究所長)
講演題目:学術機関におけるデジタルIDとトラストのこれから
講演概要:従来の学生や教員のアカウント管理や認証など、各種情報システムへのセキュアなアクセスを行うためのID管理・認証という世界観から、デジタル学修歴やデジタル学生証など新たなデジタルツールの利活用を行うためのデジタル・トラストをいかにして構築するか?が近年着目されています。本講演では従来のデジタルIDやトラストのあり方を踏まえた上で、今後のデジタル社会の発展に向けたデジタルIDとトラストのあり方について議論します。

◆18時25分~18時30分 クロージング




2024年3月18日月曜日

外部IdP利用時にRP側"でも"多要素認証を行うべきか

こんにちは、富士榮です。

今回は多要素認証の話です。
ソーシャルIDなどの外部IdPと連携をする際、外部IdP側がパスキーに対応している場合もあり、基本的にRP側はIdPの認証結果を信じて何もしないという文字通り「Relying」な感じで構成されることが多いと思います。

しかしながら、本当にそれでいいの?とうケースも存在すると思うので、少し深掘りしてみましょう。
中々難しい話だと思いますが、IdP側(例えばGoogle)で認証を強化するか、RP側(例えばECサイト)で認証を強化するか、もしくは両方か、についてユーザ体験の妥当性を含めて考えていかないといけないところです。
IdPもRPもそれぞれ責任範囲が異なるので基本的に自分の責任範囲を守る目的で多要素認証を要求していますが、ユーザから見るとなぜ別々に、、という形に見えてしまうことも事実です。

この問題を根本的なところは先に書いた通り責任範囲の話を理解する必要があるのですが、ツール(技術面)とルール(契約を含め責任論)を合わせてみていかないといけません。この辺りをトラストフレームワークと言われるもので表現をしていくことになります。

まずは技術的な話

まずは簡単な話として、技術の話をしていきましょう。(本来はルールの話をした上で技術の話をするのが良いのですが、読者層を考えるとまずは目に見えるところから入るのが良いと思っています)

本来はIdPがacrやamrで認証手段(例えばパスキーで認証したよ)という情報を渡してあげればRP側はその結果を見て追加でパスキーを要求するべきかどうかの判断をしていくのが良いと思います。ただRPを作ったことがある方はわかると思いますが、
  • IdPによって返すacr/amrが異なる
  • IdPによっては返ってこないこともある
などの事情があるので、特に複数のIdPとのID連携を行う場合は中々面倒臭いことになります。

例えば、GoogleのOpenID Connectのサポート状況を見るとドキュメントを見る限りacr/amrに関する記載はありません。


Entra IDは一応amrの値を返しますが"pwd", "mfa"の2種類しか返せないのでパスキーで認証されても、OTPで認証されても"mfa"になると思います。

Oktaの例は56さんが試してくれていますがEntraよりは少しマシな程度っぽいですね。

ということで外部IdPの認証手段までを厳密かつ標準的に取得して利用するのは現時点では結構ハードルが高そうです。
この辺りは学術認証フェデレーションでは議論が進んでいるのですが、ある程度閉じたコミュニティの中だからできる議論でもあるので、パブリックなIdPだと難しいと思います。


そもそも論として、なぜ外部IdPと連携するのか?

また、そもそも論として各IdPをどこまで信じるのか?というか何のために外部IdPを使うのか?というところに遡ってしまいます。
単に、利便性(プロフィール入力の手間の削減、パスワード登録をさせない)を提供することでドロップ率を下げましょう、という場合もありますし、本気で外部IdPの認証結果に依拠しましょう、という場合もあります。

登録時にプロフィール入力を自動化してドロップ率を下げましょう、という話だけなら認証まで外部に依存する必要は本来ないと思います。パスワード登録をRP側でさせることでドロップ率が〜〜〜という話であればパスキーを使うなりなんなりしてパスワードに依存しない認証手段を用意すれば良いと思います。
(認証まで外部IdPに依存することでログインの都度外部IdPにリダイレクトされるとなると外部IdPが落ちていた場合に発生する機会損失などのリスクもありますし)

認証手段をRPが自前で持つことがリスクという考え方をする方もいるのは事実なので、その場合は外部IdPに頼ってしまうこととのリスクとの天秤で考えるしかないと思います。
(外部IdP側でアカウント侵害が起きたらどうするの?とか)


というあたりで外部IdPとの責任問題の話になってきたところで今回は終わりです。
ある程度答えは見えていると思いますが、次回以降で主要なIdPがどこまで責任を取ってくれるつもりなのか?について少しずつ調べてメモしていこうと思います。

2021年7月23日金曜日

必読!「デジタルアイデンティティー」

 こんにちは、富士榮です。


ついに発売されました。米OpenID Foundation理事長の崎村夏彦さんによるデジタルアイデンティティに関する集大成とも言える書籍、その名も「デジタルアイデンティティー 経営者が知らないサイバービジネスの核心」です。

献本いただきましたので早速熟読してみました。


もう一言では言い尽くせないのですが、何しろ素晴らしい。(ボキャブラリー不足、、汗)

ここまで体系的かつ広い視点でデジタルアイデンティティに関して俯瞰した書籍は洋書を含めて存在していなかったんじゃないか?と思います。(Phil Windleyの「Digital Identity」はもちろん良書ですが、如何せん2004年の書籍なので古くなってきています)


とにかくこちらから購入できるので、まだの人は今すぐポチるのです。


ざっと感想を含め見どころを。

  • 言葉の定義が経緯を含めとにかく丁寧に書かれている
    • これを見ると世の中に出回っている記事がどれだけ適当な理解で書かれているのかわかってしまいます。この辺がこの領域をわかりにくくしている原因の一つだと思います。
  • 技術仕様がなぜ必要なのか、OAuth/OpenID Connectがなぜ必要となったのか、など歴史的な経緯を含め解説されている
    • 頑張って仕様を読んでも、あくまで結果をみているだけなので、なぜこのような仕様になったのか?がわからず腹に落ちにくい点もあると思います。もちろん解説記事やイベントでのプレゼンテーションは存在するのですが、分散してしまっているので体系的に理解するのは至難の業です。
  • FAPIやeKYC&IDAなど若い仕様についても言及されている
    • 単純にフレームワークとしてのOAuth/OpenID Connectだけでは不足している実世界でのユースケースと対応するためのプロファイル群についても詳細に記載されている。
  • よく知っている事件を例に何が必要だったのかを解説しており、理解しやすい
    • ドコモ口座事件、SBI証券の不正出金の件、Facebookのアクセストークン漏洩事件などIT業界のみならず広く報道された事件の裏側がデジタルアイデンティティの側面から解説されており、腹落ちしやすい。
  • プライバシーと個人情報保護の関係、トラストフレームワークなどビジネス担当も技術担当も周辺知識として知っておく必要がある知識もカバーしている
    • まさにサブタイトルにもなっている「経営者がしならない〜」という点にも繋がりますが、システム担当だけでなくビジネス担当やまさに経営者の方も知らなかった、では済まされないプライバシー尊重に関する考え方についても非常に易しく書かれており、非技術者でも読みやすい。

書き始めるとキリがないので、この辺りでやめておきます。

また、大きな特徴として「他の文献への参照が異常に少ない」という点が挙げられると思います。これは常に第一線でデジタルアイデンティティに取り組んでこられた崎村さん自身が執筆している、ということが大きく影響していると思われます。つまり、本書は今後の文献では一次ソースとして扱われることになる、ということを示しています。その点においても必携・必読であるとも言えます。


ちなみに、OpenIDファウンデーション・ジャパンでは崎村さんをお招きして本書の見所解説などを直接お話しいただく出版記念イベントを企画している最中です。こちらは纏まりましたら改めてお知らせしたいと思います。(サインもらえるかも!)