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2024年1月16日火曜日

前回のOpenID Summit Tokyoを振り返る

こんにちは、富士榮です。

いよいよ今週末、4年に一度のOpenID Summit Tokyoが渋谷ストリームで開催されます。

見どころなどは明日にでも紹介しようと思いますが、その前に4年前を少しだけ振り返っておきましょう。

前回のテーマは「真のDXを支えるID」でした。時代的にDXというキーワードが出始めていた時期ですし、OpenID Connectの適用先もコンシューマからエンタープライズへ本格的に広がってきつつある時期だったと思います。また、新たなキーワードとして自己主権型アイデンティティという言葉もこの時期から注目を集め始めていた頃です。

こちらが前回のプログラムですが、KYCやFAPI、FIDOなども注目のテーマの一つでしたね。

時刻Grand hall(同時通訳あり)Breakout room
10:00 - 10:10

開会の挨拶

Nov Matake — 一般社団法人OpenIDファウンデーション・ジャパン 事務局長
Keynote1-3 同時中継 / エバに相談コーナー
10:10 - 10:40

Keynote 1 - The Future of Identity

10:40 - 11:10

Keynote 2 - Personal Digital Transformation and Holistic Digital Identity

11:10 - 11:40

Keynote 3 - Enabling large-scale multi-party federations with OpenID Connect

11:40 - 12:30休憩
12:30 - 13:00

Open Banking beyond PSD2 in the EU

Device Identity as Yet Untold - エンタープライズ・セキュリティとデバイスIdentity

13:00 - 13:30

次世代IDaaSのポイントは本人確認~NISTと、サプライチェーンセキュリティと、みなしごID~

江川 淳一 — エクスジェンネットワークス株式会社 代表取締役

公開情報から読むCloud-assisted BLE (caBLE) をつかったWebAuthn

13:30- 14:00

OpenIDファウンデーション・ジャパン KYC WGの活動報告

OIDC活⽤で⽬指す⼈やサービスがつながる世界の社会実装

14:00- 14:30

韓国におけるFIDO/eKYC/DIDの現状と今後の取り組み

Bradly Kim — RaonSecure Co., Ltd.R&D Center/CTO

OpenID Connectとネイティブアプリを取り巻く仕様と動向 - Yahoo! JAPANの取り組み

14:30 - 14:50休憩
14:50- 15:20

銀行オープンAPIの実装 ―これまでの歩みとこれから必要なこと

三輪 純平 — 金融庁 フィンテック室長

FIDO (WebAuthN) を利用したID認証のデザインパターン

15:20- 15:50

SNS/FIDOによるセキュアなID統合管理と活用ケース - クラウドID基盤SELMIDのご紹介

花井 杏夏 — 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 西日本ビジネス開発チーム

OpenID Connect Client Initiated Backchannel Authentication Flow (CIBA)のご紹介 ~ その新しいUXと実装例のご紹介

15:50- 16:20

OpenID Connect活用したgBizID(法人共通認証基盤)の現状と今後の展望

満塩 尚史 — 経済産業省 CIO補佐官

Our Identity Experience

16:20 - 16:50

NIIが進める研究データ管理空間

山地 一禎 —国立情報学研究所
(Closed)
16:50 - 17:10休憩
17:10 - 17:40

Closing Keynote - No ID, No DX

(Closed)
17:40 - 17:50

閉会の挨拶

楠 正憲 — 一般社団法人OpenIDファウンデーション・ジャパン 代表理事
(Closed)


前回のサミットで思い出深い点が何点かあるのでその点を少しだけ紹介させてください。

コロナ直前のイベントだった

ちょうどこの直後からコロナの話題が大きく広がり、4月からは全国で外出自粛やリモートワークが展開され、結果としてしばらく大規模イベントとしての開催は休止されたり延期される事態になりました。またいみじくもコロナ禍においてはリモート環境における本人確認などID分野でもさまざまな新しいチャレンジが行われることになりましたが、その直前にこのようなイベントが開催できたのは非常に感慨深いものがありました。

Kim Cameron氏の最後の国際イベント登壇だった

非常に残念なことですが、この年のOpenID SummitがKim Cameron氏存命中の最後のリアル開催のイベント登壇となってしまいました。2020年のSummitでは自己主権型アイデンティティやブロックチェーンにアンカリングされた分散型識別子(DID)が話題に上り始めていた時期だったのでKimにはそれらの動向を踏まえて今後のデジタルアイデンティティがどのように変化してくのかを話してもらいたいというお願いをして来日いただいたのを鮮明に覚えています。
Kimのスピーチはこちら
本ブログでの文字起こしと翻訳はこちら

自己主権型アイデンティティからVerifiable Credentialsへ

先にも触れた通り、自己主権型アイデンティティの文脈が今後どうなっていくのか?について議論をする目的もありKim Cameron氏に来日いただいたこともあり、実はイベントの翌週にOpenID Foundation関係者で再度イベント(合宿)を行いました。こちらは残念ながら非公開なのですが、主に企画をOpenID FoundationでeKYC and Identity Assurance WGの共同議長を一緒にやっていたTorsten Lodderstedt氏と私で取り回していました。元々はeKYCの文脈で自己主権型アイデンティティや分散型識別子(DID)、検証可能な資格情報(Verifiable Credentials)をどのように利活用すべきか、という議論を半日かけてKim Cameron氏の考えを伺いながら議論をしました。この再度イベントには後にW3CのVerifiable Credentials Working Groupの共同議長、最近OpenID Foundationに設立されたDigital Credentials Protocol Working Groupの共同議長を務めることになる安田クリスチーナさんも参加していました。その流れもありTorsten Lodderstedt氏と安田クリスチーナさんが現在のOpenID for Verifiable Credentials関連のプロファイルの仕様策定者となっているのは非常に感慨深いものがあります。まさにこのサイドイベントがきっかけとなりデジタルクレデンシャルに関する仕様が産まれて4年が経過し、EUや日本の政府機関でもVerifiable Credentialsに関するプロジェクトが進み、まさに今年OpenID Summitが再び東京で開催されるのは運命的なものを感じます。


本当にこの4年間は世界が大きく変わったといっても過言ではない4年間だったと思います。私たちアイデンティティ・コミュニティもKim Cameron氏に加えてCraig Burton氏、そして昨年はVittorio Bertocci氏などかけがえのない方々を送り出すことになってしまいましたし、もしかすると皆様にとっても大切な人々が旅立ってしまったということもあったかもしれません。

ぜひ皆さんもこの4年間を振り返っていただき、OpenID Summitをお迎えください。皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

2022年7月2日土曜日

分散型ID関係のコミュニティ立ち上げ

こんにちは、富士榮です。


5月末にMicrosoftからAzure Active Directory、CloudKnox Permissions Management、Azure AD Verifiable CredentialsをまとめたMicrosoft Entraが発表されたこともあり、先日のOffice365勉強会で分散型ID(DID/Decentralized Identifiers)、検証可能な資格情報(VC/Verifiable Credentials)に関するプレゼンをさせていただきました。

事前申し込みも400オーバー、当日も230名くらいの方にご参加いただき、slidoの質問やコメントも止まらない感じで時間を大幅に超えて23時くらいまでやらせていただくくらいには盛況だった様です。(みんなそんなにDIDとVCに興味あるのかな?)

また、そんな中、W3Cでは長らくFormal Objectionによるこう着状態が続いていたDID Core Specificationに決着がつきW3C勧告へ進むことが承認された、との発表がありました。

これでますます開発者の人たちは安心してこの技術領域へ突き進んでいけますね!


ということで、先の勉強会でも発表させていただいたのですが、DID/VCに興味のあるエンジニアの皆さんが集まる場が欲しいよね、ということでCollabogateの三井さんやBlockBaseの山村さんたちと「DID Developer Community(仮)」を立ち上げることにしました。


と言っても現時点ではDiscordの板が存在しているくらいなので、あまりコンテンツもありませんし、アクティブな活動も予定されているわけではありませんが、まずはここにエンジニアの皆さんには集まっていただき、なんでも情報交換ができる様な場所を作れればな、、と思います。

ということでぜひご参加ください。

https://discord.gg/nn53BRRz(招待リンクが切れていたので張り替えました)

https://discord.gg/UFE9m22TeT


あ、参考までに先の勉強会で使った資料も貼っておきます。





2022年2月27日日曜日

分散型IDに関する10の所感(2022年2月版)

こんにちは、富士榮です。


なんだかんだでuPortを触ったり現Azure Active Directory Verifiable Credentialsの前身を触ったり、最近だと数カ所で実証実験プロジェクトを立ち上げたり、MS主催のDecentralized Identity Hackathonで入賞してみたり、と分散型IDに関わり始めて5年くらい経っていたりしますので、現時点で分かったことをメモしておこうかと思います。(往々にして数年後に見返すとう〜ん、となるやつだけど気にしないことにする)

※そういう意味では2019年の#didconでその時点でわかっていることをある程度まとめて発表してからおよそ3年も経つんですね・・・


また機会があればdidconでも開催してじっくりお話させていただこうと思うので思うがままに書いた乱文ですが、こんな感じかと。(いうまでもありませんが、完全に私見です。私が関与している各種団体や事業者には一切関係ありませんので悪しからず)

  1. まだ意外と誤解されているが分散型「アイデンティティ」ではない
    • DIDはDecentralized "Identifiers"でありDecentralized "Identity"ではない。
    • なぜならIdentity=Set of attribute(ISO/IEC 24760-1 2019)なのでDecentralized "Identity"という話であればOpenID ConnectのDistributed Claimsの方がよっぽど分散されている。
    • では、何が分散されているのか?というと識別子(Identifier)と関連するメタデータ(Document)が分散台帳等の上(これも特にブロックチェーンと明確に規定されているわけではなく、現に全然分散されていないDIDもある)にデプロイされることで単一事業者等への依存度をさげられたり、関連して相対的にではありますが可用性などを気にする必要性が少なくなったり、というレベルの話。
    • というか、W3Cが規定しているのはDecentralized "Identifiers"だし、決めているのは識別子とメタデータ(DID Document)の書き方くらい。

  2. 自己主権型アイデンティティは幻想?
    • そもそもデータに関する主権ってなに?という話で、先にも書いた通り目的語が不明確な中でDecentralizedが分権型なのか、分散型なのか、非中央集権型なのかもぼやけている中で何を持って自己主権なのか?というレベル。
    • パブリック/パーミッションレスな分散台帳に識別子(Identifier)と署名検証に使う公開鍵を含むメタデータ(DID Document)を公開することで特定の事業者が当該のエンティティに関するデジタル上での生殺与奪に関するコントロールしずらくなる、ということを言いたいんだ、ことはわかるんですが、それが果たして「自己主権」に繋がるのか?と言われるとうーむ、という話。
    • もう一つはVerifiable Credentialsの持つポータビリティという性質の話。後でも触れるがDIDをうまく使うことでIdPとRPの結合度を下げることは確かに可能で、結果としてVerifiable CredentialsをWalletと言われるスマートフォン等で動作するソフトウェアの中に格納して個人が持ち運ぶことも可能、という意味ではIdPからの独立性=自分で自分のアイデンティティをコントロールしている感を醸成しやすいという点は認めることはできる。
    • 結局のところ、唯一言えるのは自己主権型アイデンティティというのは思想であり、テクノロジとは切り離して考えるべきだ、ということ。たしかに現状のFederationを考えると相対的に分散台帳と紐づいたDIDと関連する鍵によって署名されたVerifable Credentialsは事業者の「支配」から逃れられている気にさせてくれる。
    • ちなみにこれは最も重要な点かも知れないが、DIDが「did:メソッド名:固有の識別子」という形式をとっている以上、メソッドを跨いでDIDや署名済みのVCを持ち運ぶ(引っ越す)ことは事実上不可能である点は見逃してはいけないと思う。

  3. Verifiable Credentialsが本命?
    • 今年度私も少しだけお手伝いさせていただいている内閣官房Trusted Web推進協議会のホワイトペーパーにも記載の通り、暗黙的な信頼から検証に基づくExplicitな信頼へという流れはDXの要になると思われる。まさにDon't trust, Verifyという言葉が全てを物語っている。
    • ただ、ここで解決しておかないといけないのはSAMLやOpenID ConnectのAssertionへのデジタル署名との違い。確かにCOVID-19のワクチン証明にVerifiable Credentialsを使ったことに新しさはあるけど、実態はデジタル庁の自己署名を打っただけのJSONなので、耐改竄性という意味においてはSAML AssertionやOpenID Connectのid_tokenと何ら変わらない。(もちろんFHIRの標準化されたSchemaをPayloadに使うという意味においてアプリケーションレイヤでの相互運用まで踏み込んだ点では非常に重要なアプローチだとは思う)
    • では、DIDとセットにする意味は?という話だが、実際問題としてメリットはゼロではない。どういうことかというと、署名検証をするための公開鍵をjwks_uriなどで公開しているケースに比べて、こんなメリットがある。
      • 事業者がIdPの可用性をそれほど考えなくて良い(IdPが落ちていても分散台帳上にDID Documentを公開してしまえば、コンロトーラビリティは下がるが相対的に可用性は向上することが多い)
      • OPがシャットダウンされた時、ユーザが署名付きクレデンシャルの真正性を証明できなくなる、という事態はなくなる
    • とはいえ、よくある話として署名アルゴリズムの危殆化の話は当然あるので、(相対的に単一事業者の都合が可用性に与える影響度合いが少ないと言える)分散台帳に公開鍵を置いているからと言って半永久的にVerifiiable Credentialsの署名を信頼できるかというとそうではなく、実運用では少なくとも数年に一度はVCの再発行は必要になると思われる。そうなるとIdPの事業継続性の観点でVCが優位というロジックは非常に限定的(つまり、少なくともIdPが潰れても数年間は資格証明が可能というレベル)だし、いわゆるソーシャル・インクルージョンの文脈で語られる国家というIdPによるネグレクトに対する銀の玉にはなりそうにもない。

  4. VC発行者に関する信頼は難しい問題
    • VCの発行に際して発行者は自身のDIDにに紐づく秘密鍵で署名するわけなので、そのDIDは誰なのか?信頼できるのか?という点が重要になってくる。
    • 実世界のビジネスモデルを考えるとDNSの持つ分散ガバナンスモデルに依拠するのが落とし所、という形でwell-known did-configurationがMSでもMattrでも実装されているが、DID/VCのモデルの外に依存している段階で分散とか分権とかいうキーワードは虚しく感じられるのは自分だけではないはず。
    • そして、結局は一番怪しいのがDIDからDID DocumentをLookupするためのResolverの信頼性。もちろんUniversal Resolverを含めオープンな実装は透明性という意味である程度信頼はできるとは思うが、結局はDriverの実装者と実インスタンスを動かしている事業者の誠実さを「信頼」するしかないのが現状。

  5. いくらVerifiableだったところで信頼されるとは限らない
    • そもそもTrust FrameworkってITの世界でクローズできるものではない。
    • 実際、いくらデジタル署名されたデータセットは改竄されにくい、と言ったところで人間はヒューリスティックな生き物で「見たことがある紙やプラスチックの物理的な身分証明書」を対面で提示されることにはかなわない。
    • これはDXの本質的な話で、Digitization〜Digitalizationなど段階を定義するのは良いが、現実論としてDigitizationとDigitalizationの間には大きな溝があると思う。みんなPDFとかExcelが大好きだし、最後の手段で紙に戻せば業務継続できると思っている段階で、最初から紙を前提としないDigitalizationの段階へは永遠に進めないと思う。
    • そういう意味ではVerifiableという特性をフルに活かすことのできるユースケースをなるべく早く見つけることが最大のミッションなのかも知れない。この辺りは先にも触れたTrusted Web推進協議会が大きな役割を果たすことが期待される。

  6. KYCというか本人確認・身元確認との相性はそれほど良くはない
    • 結局、Identity Proofingの本質はNIST SP800-63Aでいうところの、
      • Resolution
      • Validation
      • Verification
    • というステップによって構成されており、この中でVCが役に立つのはValidation(提出したエビデンスの真正性検証)。でも良く考えるとValidationの本質はオーソリティへの照会(この辺りは身元確認の「元」という文字にも現れている)なので、Evidenceが改竄されていないことの証明だけでは不十分。
    • 確かにRevokeに関するスペック(Status List 2021)も標準化が進んできているので有効性確認はできるようになるとは思われるが、Evidence発行元におけるKYCプロセスの信頼性まで担保できるわけではないし、オーソリティの信頼性の方がEvidence自体の耐改竄性よりも重要な世界。
    • また、Verification(Evidenceに記載のエンティティとEvidence持参のエンティティの同一性確認)ができるわけではない
    • となると、身元確認ではなくOpenBadgeがやっているように資格証明程度に使うのが現実的だと思われる。

  7. 結局はIdPとRPの結合度を下げることが可能、というのが最大のメリット?
    • こうなるとOpenBadgeではダメなの?という話はあるが現状のOpenBadgeのほとんどがSigned型ではなくHosted型(Issuerへの問い合わせにより真正性・有効性を検証する方式)であることを考えると、システム間の結合度を考えると一定の優位性はある状態(少なくともSigned型が普及するまでは)
    • つまり、結局のところシステム間(OPとRPの間)の結合度をさげるためのもの、という使い方が現状ではベストなのでは?と思われる。
    • 事実、去年のIIWでのユースケースに関するディスカッションをしている時に私が話した、大学のID基盤の管理負荷(ライセンス・インフラのサイジング・可用性)を下げることができるのでは?というのが一番響いたっぽい。(少なくともVittorioあたりには)

  8. 標準化の実際はどうなっているのか?
    • まだまだカオスに見える。Hyperledger勢がDecentralized Identity FoundationとかTrust over IP Foundationとかで推しているDIDcommや、OpenID FoundationでやっているSIOP v2OIDC4VPとか。
    • そもそも論、VCにJSON-LDを使うのかJSONで行くのかも議論が尽きないポイント。
    • そんな中、いろんなベンダがビジネスとして立ち上がってきており微妙な段階の仕様を実装してサンプルコードとかを公開するので、世の中の開発者が真似をしてさらにカオスな状態が出来上がり、標準化とは?という世界が出来上がりつつある。

  9. ゼロ知識証明(ZKP)、選択的開示(Selective Disclosure)が本命?
    • そもそもゼロ知識証明に関してはMSが買収したuProveとかIBMのIdeMixとか昔から研究されてきている領域だけどまだまだ実用化には遠いのが現状。(そういえば10年以上前にuProveのテストインプリがされたWindows Identity FoundationのPrivate Previewのテストをやっていたのが懐かしい)
    • またZKPとSelective Disclosureはごっちゃに語られることも多いけど、結局のところ必要なのはSelective Disclosure。この辺はBBS+とか頑張ってるがまだまだ課題はあり(隠せる範囲が限定される、など)、早稲田の佐古先生とかIIJの山本さんが拡張提案をしていたりするのでこの辺りは要ウォッチ。
    • よく言われる物理世界ではできなくてデジタルの世界でできるようになるといいよね、と言われるバーに入る時の年齢確認に免許証を出すと年齢以外の情報までガードマンに知られちゃう、という話への対応はこの辺りのテクノロジの成熟と実装に期待はされている。ただ、本当にガードマンに年齢以外に名前を知られて困るのか?という話はあるので、ユースケースについてはもっと議論しないとダメだと思う。

  10. 結局何か世の中の課題を解決できたのか?
    • よく言われるものとして、
      • プライバシー
      • 検証可能性
    • があるが、上記を見ている結局そこまで解決に至っているとはいえない。
    • それよりも、上記に書いた通りOPとRPの間の結合度を下げることによる管理面やインフラ的なコスト削減が一番のメリットになるのでは?


と、色々書きましたがテクノロジーとしては非常に面白く今後世界を変える可能性のあるものだと信じているので引き続き研究していきたいと思います。

2020年9月26日土曜日

Microsoft IgniteでのDID/VC関連トピックス

こんにちは、富士榮です。

先週のオンライン開催されたMicrosoft IgniteではAzure Active Directoryを始めとするアイデンティティ関連のトピックスや新機能発表が色々とありました。

個人的に気になったのは、

  • Identity ProtectionがAzure AD B2Cにもきた
  • 条件付きアクセスがGraph API経由で触れる様になった
  • ヘッダ認証が使える様になった
  • VC関係の近況と退役軍人向けの教育プログラムへの適用事例
の4点です。

1点目は先日Blogにも書いた通り、今後のB2C向けサービスの幅が非常に広がる話ですし、2点目はリスクイベントを拾ってTeamsなど外部サービスに連携させるデモなどもあり運用面で非常に有用だと思いました。また3点目は以前Ping Access連携で実現していたことがMS純正でできる様になる、というところでレガシーアプリケーションへの適用の面では非常に有用だと思います。

そして、最後が本日のメインであるDID/VC関係の近況です。
* DID : Decentralized Identifier
* VC : Verifiable Credentials

こちらも以前ブログに書きましたが、その後ブラッシュアップされてきているもです。
※この辺のキーワード(含む自己主権型アイデンティティ/SSI)の使い方は間違って使われているケースが散見される(Decentralized Identityとか)たり、=ブロックチェーンみたいな誤解もあるみたいなのでどこかでちゃんとまとめないとな、、、と。この辺りのスライドを書いてから、自分の理解も進んだのと標準化の方向性も進捗してるのでどこかでUpdateします。。。

話がそれましたが、早速Igniteでのトピックスを追いかけてみましょう。

VC関係の話が取り上げられたのはキーノートを含む以下の4つのセッションです。

全体を簡単に要約すると、
  • VCを使うとVerifier(学校とか企業とか)が各種証明(学歴、職歴など)を簡単・確実に検証できるよ
  • VerifierがSubject(個人)の情報を一生懸命集める事によるプライバシー上の懸念もなくなるよ
  • すでに米国の退役軍人向けの教育プログラム(MILGears)で実証実験が走ってるよ
  • 今はプライベートプレビューだけど、もうすぐみんな使える様になるぞ!
  • VCをLinkedInのプロファイルに追加できるなるぞ!
みたいな話でした。

ざっくりみていきましょう。

まずはSatyaのキーノートです。後半54分あたりからDecentralized Identity Systemの話が出てきます。

私たちはオープンな分散型アイデンティティシステムを作り上げようとしています。そしてそれは、どんな中央集権的なオーソリティやテック企業からも独立しています。すでに退役軍人向けの教育プログラムでパイロットをしています。


彼らは自身の検証済みの記録をスマートフォン上のWalletに保管することができ、大学や企業に直接提示することができます。大学はそれ(VC)を数秒で検証することができ、センシティブなデータを保管する必要はありません。また退役軍人たちは、VCをLinkedInのプロファイルに追加することができ、新たな職業を得る機会に役立つでしょう。


次はVasuのキーノートです。途中16分すぎから出てくるIrinaのパートでIdentityの話があり、17分過ぎから分散型アイデンティティの話です。

オンライン化に伴いデジタル信頼やプライバシーはとっても重要なものになっています。しかし現在私たちはアイデンティティをデジタルに検証する仕組みを持っておらず、またデジタル・プライバシーは私たちのコントロール外となっています。私たちがパーソナルデータをオンラインで共有する際、企業・組織は記載されている目的外には利用せず、許可なく共有することはないことを約束し、それらのパーソナルデータが盗まれない様に、誤用されない様に保護する努力をします。マイクロソフトはすべての人々が自身のアイデンティティをコントロールできる様にする必要があると考えています。アイデンティティはどんな組織やテック企業からも独立しているべきなのです。これが私たちが分散型アイデンティティ分野に投資する理由であり、すべての人が自身のデジタルアイデンティティを所有し、誰が何の目的でいつアクセスできるか決定できるべきだと考えています。
年齢、学歴、職歴、クレジットスコア、生体情報は利用者自身のコントロール配下におかれ、政府や大学や企業の様なサードパーティはそれらの情報を検証できる様になります。それらすべてのクレデンシャルはデジタル・カードの様な形でMicrosoft Authenticatorの様なデジタル・ウォレットに保存されます。



私たちはVerifiable CredentialsとDecentralized Identifiersに関するオープンな標準に基づく自己主権型アイデンティティのヴィジョンを現実のものとするため、Decentralized Identity Foundationと共に活動しています。

私たちはこの分散型アイデンティティのシステムを多くの顧客と共にパイロットしており、MILGearsの教育プログラムもその一つです。 


ここでMilGearの人のインタビュー動画が流れた後、VasuがIrinaに今のステータスと今後どうなるの?って聞いてくれます(Good Job!)。「We're currently in private preview, but soon anyone will be able to try it.」素晴らしい!


次はおなじみJoyです。19分くらいから分散型アイデンティティ関係の話が始まります。


我々が物理的な世界で行ってきたパスポートや学位やその他証明書のやりとりをデジタル化するにはどうすれば良いのでしょうか?私たちはデジタルにそれらのクレデンシャルを検証するメカニズムが必要です。しかし今日私たちが持っているシステムはデータ漏洩や誤用で溢れています。私たちは分散型アイデンティティシステムとVerifiable Credentialsが解決策になると信じています。コミュニティの努力とオープンな標準をベースに構成され、既存のアイデンティティシステムと簡単に接続することが可能です。それはオープンな標準技術を用いており、マイクロソフトを含むどんな組織も支配することはできません。そして、それはすでに現実のものとなっているのです。


ここでやはりMILGearsの事例の話。どこにVerifiable Credentialsを提示したのか確認することができます。


退役後、大学や企業に就職する際に、軍がIssuerとなってそれまでの学歴や経歴を証明する、という形態の様ですね。

退役後、高等教育や企業への就職する際、大学や企業は学歴や軍でのトレーニング履歴にアクセスする方法がありませんでした。そのため、彼らは証明書などのドキュメントを収集し確認する長いプロセスを必要としていました。そして、多くの場合、それらのプロセスは紙をベースとしており、数ヶ月を要することもありました。

このプロセスをデジタル化することにより、彼らの待ち時間を減らすだけでなく、自身のデータに関するコントロールを行うことができる様になりました。大学がデータを収集し、保管し、保護する必要がなくなったのです。


ここでMILGearsのデモです。ここでMILGearsが保持している記録をVerifiable Credentialsとして発行します。

QRコードが表示されるのでMicrosoft Authenticatorで読み込むとカードの形でVerifiable CredentialsがAuthenticator上に追加されます。

次は大学にVerifiable Credentialsを提示します。こちらもQRコードを読み込むとVerifiable Credentialsが提示され、検証済みのデータとして大学側へ連携されます。


デモに続いてテクニカルな話をMelanieさんから。必要なのはAzure Active Directoryサブスクリプション(正確にはPremium P1以上)とKeyVaultだけ(こちらも正確にはStorageは必要)。やるべきことはたった3つ。KeyVaultでキーペアの作成をする、Rulesファイルを作る、Displayファイルを作る、とってもシンプルでしょ、的なデモです。
こちら、Rulesファイルですね。まぁ、確かに簡単な構造のjsonです。

こちらはDisplayファイル。こちらも非常にシンプルなjsonファイル。Authenticatorに表示されるカードのロゴとか色を決める感じですね。


というところでJoyのキーノートは終了です。

最後はMicrosoft Mechanicsですが、こちらも結局Joyががっつり話をします。
中身的には、W3Cの標準をちゃんとみてるよ、という話とこれまであったMILGearsの事例、KeyVault、RulesとDisplayなど実装にかかる話のおさらい的な感じのセッションです。

MILGearsの事例をベースにIssuer=MILGears/Subject(Holder)=退役軍人/Verifier=大学など、と関係性を解説してくれています。わかりやすい。

ブロックチェーンとの関係も最後に少しだけ触れられます。基本的にDID Documentと公開鍵の置き場所として使ってるだけです。



全体的にまだ詳しいところは触れられない感じでしたが、こうして動いている姿を見ることができると非常に面白いですね。MILGearsのケースも非常に面白いと思います。退役軍人っていうともっと年寄りでそのまま隠居する?ってイメージでしたが結構若い間に退役して、その後大学に行ったり企業に就職したりするケースもあり、その場合に身元保証を軍がやる、というのは日本にいるとあまりイメージが湧きにくいとは思いますが、話を聞いてみると納得、という非常に良いユースケースだと思います。

DID/VCはとても面白いテクノロジだとは思いますし、可能性も感じますが、別にDID/VCじゃなくても良いじゃん、というケースばかりなので今後DID/VCならではのユースケースがもっと研究されると良いな、というのが全体的な感想でした。