2024年3月30日土曜日

自己主権型IDとフェデレーション型IDに関する議論

こんにちは、富士榮です。

今日はちょっと前の記事ですが、SSIとFederationについてHeather Flanaganさんが考えを書いているので紹介しようと思います。IDProや古くはKantaraやREFEDSなどで活動されている方ですね。しかしSSIがいいのかFederationがいいのかっていうのは色々なところで色々な人たちが議論をしていますが、明快な答えってないですよね。まぁそれもそのはず「時と場合による」話でしかないのと、一番大きいのが技術の話をしているのか思想の話をしているのか、みなさんMixしているのでクリアな議論にならないっていうのがあるからですね。

ということでちょっと見ていきましょう。
Federated Identity and SSI – YMMV

ご本人もYMMV(your mileage may vary)って書かれているように、「どう受け取るかはみなさん次第」ということです。

また冒頭にも記載されていますが、そんなに世の中単純じゃないので全てにフィットするものなんてないよね、ということを書かれています。
There is no “one size fits all,” though passionate proponents of various technologies may beg to differ. Alas, the world is not that simple:
そして、こうとも書かれています。
誰もが SSI という用語を好むわけではないことを認識しましょう。デジタルウォレットテクノロジーがこのカテゴリーに該当するかどうかは不明です。そうだと言う人もいれば、そうでない人もいます。 SSI の初期の支持者たちがほぼブロックチェーン技術だけに焦点を当てていたことに、すぐに嫌悪感を抱く人もいます。
すみません。技術としてブロックチェーンの良し悪しを述べるつもりはありませんが、私もSSIアレルギーっぽくなってしまってきているのはこの点なのかもしれません。

そして、色々な切り口でSSIとFederated Identityを比較していっています。

Dicsovery

まずはDiscoveryです。
どちらのモデルでも、個人がどの資格情報を使用するかを選択できる必要があります。これは、Federated Identity 内で、リストから ID プロバイダー (IdP) を選択するか、その ID をダイアログ ボックスに入力できることを意味します。 SSI モデルでは、これは、ローカルに保存された資格情報のリストから選択できること、または適切な資格情報を保存するために使用される適切なコンテナ (別名デジタル ウォレット) を選択できることを意味します。
FederatedモデルではいわゆるNASCAR問題を引き起こす原因でもあるのがこのDiscovery問題ですね。先日ポストしたWebfingerによるDiscoveryや学術機関で使っているDiscovery Service(DS)なんかはこの課題に対応するためのソリューションとして考えられましたが、まだ完全に解決しているとは言えない状態です。


共有される情報の制御

次に触れられているのがIdPとRPの間で共有される情報の制御に関する相違点です。
When talking about federated identity models, protocols like the Security Assertion Markup Language (SAML), OAuth, and OpenID Connect are what describe (and constrain) everything including the claims, the assertions used, the structure of the attributes shared, the way identity provider discovery is handled, and more. A great deal of control is given to both the RP and the IdP, and there is a coarse level of control for the individual (generally in the form of “you can either choose to log in or not, but you aren’t guaranteed control over what information is shared as a result”).

とあるようにやり取りされる情報の内容や構造についての制御の大半はIdPとRPが行うことになり、ユーザが制御できるのは「ログインするのか、しないのか?」程度になってしまいます。

その点、SSIのモデルではユーザによる選択(特にSD-JWTやmDLなどの選択的開示)が中心となっています。

(個人的な意見)これはどうなんだろうなぁ・・・。Federatedだからユーザに選択権がないっていうのは既存のIdPの実装の問題なんじゃないかな?とも思います。本来は属性の選択的開示をするように属性提供同意画面でオプトアウトできるようになっているべきだし、先ほどのNASCAR問題はあるものの使うクレデンシャル(あえてクレデンシャルと言いますが使うIdPのこと)も自分で選ぶことができるようにDiscoveryの設計をするのがRP側の仕事だったのでは?とも思います。これはSSIだったとしてもVerifierが何を求めるのか、Issuerが何を発行するのか、Walletがその情報をどう扱うのか、、など本当にユーザに制御権ってあるんでしょうかねぇ。。とは言え、Federatedモデルではそのあたりの実装有無をIdPやRPが握ってしまっているのは事実ではあります。

横道にそれました。

クロスデバイスのサポート

もう一つのSSIの特徴としてパスワードからの脱却の文脈を含めクロスデバイスの話が出てきます。

(たとえば) 複数のデバイスにパスワードを記憶したりコピーしたりする必要があるのではなく、1 台のモバイル デバイスに保存されている資格情報を、デスクトップやタブレットなどの別のデバイスの認証または認可プロセスで使用できます。

CIBAとかDevice Code Flowがあるじゃないか、とかパスキーでよくない?という話もありそうですが、まぁ確かに特徴の一つではあります。

一方で課題も

これ、本当に大切な問題だと思います。UXとプライバシー。

UX の課題は非常に重大です。 SSI モデルを前進させるために開発中のテクノロジーは、単なる ID をサポートするものではありません。また、支払いシステム、交通チケット、図書館カード、保険カード、ホテルのキー、車のキーなど、リストはさらに続きます。このモデルを、これらすべてのカードを物理的な財布に入れているのと似ていると比較することはできますが、カードが多すぎて、必要なときに適切なカードを見つけることができないという点が生じます

先ほどのNASCAR問題にも通じますが、これまでIdP側で発生していた問題が手元(Wallet)に移動してきただけです。

プライバシーの問題も重大です。

プライバシーへの配慮が使いやすさをさらに難しくしています。資格情報はデジタル ウォレットに保存されることが多く、そのウォレットはランダムなリクエストから資格情報を保護します。おそらく、物理的なウォレットが保持するカードと何の関係もないのと同じように、ウォレットは、保持する認証情報と何の関係も持つべきではありません。ここでの複雑さの可能性を最大限に高めるために、さまざまな認証情報を保持するウォレットが複数ある可能性があります。 

これ、本当に難しい問題でWallet提供者は、そのWalletの中にユーザが何を入れるのか?を把握できたらFederated時代のIdPによる行動把握の比較にならないくらいヤバい話になると思います。この辺りは特に政府が提供するWallet、なんて話も出ていますが十分すぎるくらいの透明性を持たせないといけないと思います。

Digital Identity Wallet(DIW)に関するPoC開発・調査について

https://trustedweb.go.jp/public-offering/2023/trusted_web2023_diw

さらに、どこまでユーザに責任を押し付けるのか、という問題もあります。

人々が正しい選択をする可能性は低いと想定し、さまざまな自由や技術革新を制限することで国民を守るパターナリスティックな国民国家に誰もが住みたいわけではない。とはいえ、その行動の影響が明らかかどうかにかかわらず、自分の行動に責任を個人に負わせる完全な自由主義的な環境での生活を誰もが望んでいるわけではありません。

この辺りは先日ポストした「自己主権型アイデンティティは本当か?情報銀行からの学びはあるのか?」にも書きましたが、本当の意味での情報銀行的な役割をWalletプロバイダが追うことになる日も来るのかもしれません。

https://idmlab.eidentity.jp/2024/03/blog-post_11.html


まとめ

結局結論なんて言うものは出ないわけですが、彼女の以下の3つの言葉が重要だっていうことです。

従来のフェデレーション ID モデルと新しい SSI アーキテクチャは相互に排他的ではありません。彼らはさまざまな問題を解決することだけに集中します。 

現在見られるテクノロジーは完全に完成したわけではなく、技術者が望むすべてを解決するにはまだ成長する必要があります。

これらのテクノロジーの開発と展開の指導に確実に貢献するために、ディスカッションに参加することです。 


これからもコントリビューションしていきましょう。

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