2024年10月6日日曜日

SIDI Hub - ベルリンレポートを読む(3)

こんにちは、富士榮です。

粛々とSIDI Hub Tokyoの準備は進んでいるわけですが、始まるまでにちゃんとベルリンのレポートを読み終わっておきましょう。


前回まででPart Oneの概要が終わったので今回からはPart Twoのセッションごとの詳細レポートを見ていきます。

SIDI Summit Introduction - Mark Haine

まずはイントロです。Markがレポートしてくれています。 

Debora Comparin (SIA), one of the founders and organizers of SIDI Hub, opened the day and welcomed participants to the third convening of SIDI Hub before EIC in Berlin. Afforded by its association with EIC, SIDI Hub is pleased to have expertise in the room that spans deep technical knowledge of transnational governance. Further attesting to this, representatives from Germany’s Federal Ministry of the Interior & Community and SPRIN-D, Germany’s Federal Agency for Disruptive Innovation, spoke to the importance of SIDI Hub’s focus on cross-border interoperability and open standards.

SIDIハブの創設者の一人であり、主催者でもあるデボラ・コンパリン(SIA)は、ベルリンのEICの前に開催されたSIDIハブの第3回会合への参加者を歓迎し、開会を宣言した。EICとの提携により、SIDIハブはトランスナショナル・ガバナンスに関する深い技術的知識を持つ専門家を会場に迎えることができた。このことをさらに証明するように、ドイツ連邦内務・地域省およびドイツ連邦破壊的イノベーション機関SPRIN-Dの代表者は、国境を越えた相互運用性とオープンスタンダードに焦点を当てたSIDI Hubの重要性を語った。

私も現地で参加しましたが、ドイツ政府の100%出資の機関であるSPRIN-Dのオフィスでイベントは開催されました。そのため、最初のWelcome keynoteはSPRIN-Dの方が担当しました。

Nick Mothershaw (OIX) reviewed the agenda, which emphasized the following:

1. Identifying Champion Use Cases

2. Identifying Major Barriers to Interoperability

3. Minimum Technical Requirements for Interoperability

4. Deepening our Trust Framework Analysis

5. Critical Research Questions

Nick Mothershaw(OIX)は、以下の点を強調したアジェンダをレビューした。

1 チャンピオンのユースケースの特定

2. 相互運用性に対する主な障壁の特定

3. 相互運用性のための最低技術要件

4. 信頼フレームワーク分析の深化

5. 重要な研究課題

そのあとはNickによるアジェンダの紹介がありました。


SIDI Strategy and Structure - Mark

続いてGailによるSIDI Hubのストラテジーとストラクチャの話です。
Gail Hodges provided an overview of the origins of SIDI Hub, which derived from an ID4Africa presentation and the “Human-Centric Digital Identity” paper. In particular, the problem of cross-border interoperability in the context of national Digital Identity strategies encompassing a wide range of technical architectures and governance models.
Gail Hodges は、ID4Africa のプレゼンテーションと「人間中心のデジタル ID」論文から派生した SIDI ハブの起源について概要を説明した。特に、広範な技術アーキテクチャーとガバナンス・モデルを包含する各国のデジタル ID 戦略の文脈における国境を越えた相互運用性の問題について述べた。


この辺りはいつものGailのセッションなのですが、各国のデジタルID戦略をPublic Governance-Private Governance、Centralized-Decentralizedの2軸で4象限に分類し、現状のばらつきを表現しつつ、この環境のもとで国境を超えた相互運用性を達成することの必要性について話しているわけです。

Despite these challenges - and the ongoing need for domestic sovereignty - can one’s Digital Identity be as easy to present as an email, a phone number, or a passport? SIDI Hub seeks to build a blueprint for how we build Digital Identity ecosystems within and across ecosystems. The goal is for implementers to build interoperable Digital Identity credentials by default. But this, of course, requires measurement and metrics, policies, open standards, open source code (in many jurisdictions), and scientific analysis for best practice security.

このような課題があるにもかかわらず、そして国内主権の継続的な必要性があるにもかか わらず、デジタル ID は電子メール、電話番号、パスポートのように簡単に提示することができるのだろうか?SIDI ハブは、エコシステム内およびエコシステム間でデジタル ID エコシステムを構築する方法の青写真を構築することを目指す。目標は、実装者がデフォルトで相互運用可能なデジタル ID クレデンシャルを構築することである。しかし、これにはもちろん、測定と測定基準、ポリシー、オープン・スタンダード、オープン・ ソース・コード(多くの法域で)、およびベスト・プラクティスのセキュリティのための科学 的分析が必要である。


こんなバラバラな状態の中でもデジタルIDをメールや電話やパスポートのように国境を超えて世界中で相互運用できる状態にするにはやることがたくさんありますね。まさにこれがSIDI Hubがやろうとしていること、というわけです。



SIDI Hub is self-organized into five workstreams:

  • Champion Use Cases
  • Trust Framework Mapping
  • Minimum Requirements for Interoperability
  • Metrics of Success
  • Governance

As referenced above, SIDI Hub has no governance authority of its own. We therefore discussed where decisions are made, which remain unchanged as a result of SIDI Hub, and how SIDI aims to support them.

SIDI Hubは、以下の5つのワークストリームから構成される。

  • チャンピオンのユースケース
  • トラストフレームワークマッピン
  • 相互運用のための最低要件
  • 成功の指標
  • ガバナンス

上記で言及したように、SIDI Hub はそれ自体のガバナンス権限を持たない。そのため、SIDI Hubの結果として変わることのない意思決定がどこで行われるのか、また、SIDIがどのようにそれをサポートすることを目指しているのかについて議論した。


こちらはいつものSIDI Hubとは何なのか、という話と構成するワークストリームの話ですね。 非常に難しい部分なのですがコミュニティなのでコンセンサスを取りながら意思決定をしていくというのが特徴でもあります。この辺りは今後変わっていくかもしれません。


今回はこのくらいです。ユースケース分析のセッションについて次回解説します。

2024年10月5日土曜日

Kim Cameron Awardの受賞者によるIdentiverseへの参加レポート

こんにちは、富士榮です。

先日お知らせしたVittorio Bertocciアワードと並行してDIAF(Digital Identity Advancement Foundation)が提供する個人向けの世界2大アイデンティティ・アワードであるKim Cameronアワードの受賞者であるMatthew SpenceがIdentiverse 2024への参加レポートを書いています。


https://digitalidadvancement.org/news/2024-kim-cameron-awardee-reflections-matthew-spence/

DIAFではアワード受賞者にIdentiverseやIIW、EICなどのカンファレンスへの参加をサポートしており、有能でやる気があっても費用面で課題がある若手などへのスポンサーをしています。

ダイバーシティを確保のためにはこのような取り組みは非常に有用ですね。日本でも何かやれないかなぁ、、、と思いますが、まずは日本からもDIAFのアワードにApplyしてみる方が出てくることに期待です。






2024年10月4日金曜日

OpenID Connect for Identity Assuranceの仕様が承認されました

こんにちは、富士榮です。

Great newsです。
先日より投票が開始されていたOpenID Connect for Identity Assuranceの仕様が最終化、承認されました。
投票のお知らせ)

最終化に関する公式アナウンス)


今回承認された仕様は以下のとおりです。

皆さん、使っていきましょう。

2024年10月3日木曜日

SIDI Hub東京、前々夜祭を開きます

こんにちは、富士榮です。

いよいよ今月末はSIDI Hub東京イベントです。
が、小規模でのディスカッション中心、かつ英語イベントということもあり招待者に限りご参加いただくという形となります。

そのため、日本のアイデンティティ関係者の皆さんにも概要を知っていただく場として前々夜祭としてイベントを開くことにしました。

こちらは日本語で、かつ実際に活動をしている方からも話をしてもらえるようにしたいと思いますので、ぜひご参加ください。

2024年10月2日水曜日

Death and the Digital Estate(DADE)CGが発足

こんにちは、富士榮です。

DADE CG(Death and the Digital Estate Community Group)の発足がアナウンスされています。死後のデジタルアイデンティティや遺産について扱うコミュニティグループです。

4月のIIWの前日のOpenID Foundation Workshopで触れられていたコミュニティですね。


当時AWSにいたDean Saxe(右から二人目。今はBeyond Identityに移籍)がChairを務めるようです。

メーリングリストへの参加なども受け付けていますので参加してみてはいかがでしょうか?

2024年10月1日火曜日

SIDI Hub - ベルリンレポートを読む(2)

こんにちは、富士榮です。


しばらく別のネタばかりでSIDI Hubについてかけていませんでしたが、10月に入ったので東京開催秒読みということでベルリンレポートの続きを読んでいきます。


前回からしばらく開きましたが、今回は続きです。

Users of a Trust Framework Analysis Tool

A major output of the SIDI Hub 2024 strategy, led by the Open Identity Exchange (OIX), will be a Trust Framework Comparison Tool. This will be bolstered by further analysis and normalization of Trust Frameworks supported by SIDI Hub. At the SIDI Berlin session, breakout groups shaped the value proposition and requirements for such a comparison tool, which will directly influence the final deliverable. Further information is found in the Rapporteur’s notes (next section).

信頼フレームワーク分析ツールのユーザー 

Open Identity Exchange (OIX) が主導する SIDI Hub 2024 戦略の主な成果のひとつは、信頼フレームワーク比較ツールです。これは、SIDI Hub がサポートする信頼フレームワークのさらなる分析と標準化によって強化されます。SIDI Berlin セッションでは、分科会がこのような比較ツールの価値提案と要件を策定し、最終成果物に直接影響を与えることになります。詳細は、ラポータのメモ(次項)をご覧ください。 

トラストフレームワークのマッピングに関して書かれていますね。

現在、各国で制定が進んでいるトラストフレームワークの相互運用が可能な状態にならないと国の間で相互運用性の担保ができなくなるのでここでいうマッピングは非常に重要です。OpenIDファウンデーションジャパンではOIXに協力する形で日本のトラストフレームワークのマッピングを支援しています。

BOLTS: Business, Operational, Legal, Technical, and Social

Given the above take-aways, which span Business, Operational, Legal, Technical, and Social forces that impact the global interoperability effort, the group will use a “BOLTS” framework as a core part of its Champion Use Case analysis.

BOLTS:ビジネス、運用、法律、技術、社会

グローバルな相互運用性への取り組みに影響を与えるビジネス、運用、法律、技術、社会の各分野における上記の要点を踏まえ、当グループは「BOLTS」フレームワークをチャンピオンユースケース分析の中核として使用します。

相互運用性を考える上では技術だけを考えていたは不十分です。ここにあるようにビジネス、運用、法律、社会を含めて考える必要がある、ということです。

Government Participation

A final point of reflection relates to the audience for SIDI Hub events. Given the light attendance from government officials in Berlin, the agenda skewed towards a technical audience that discussed technical possibilities. This is not ideal.

政府の参加

最後に、SIDI Hubのイベントの聴衆について考察したいと思います。ベルリンでの政府関係者の出席が少なかったため、技術的な可能性について議論する技術的な聴衆に偏ったアジェンダとなりました。これは理想的ではありません。

先に記載した通り、法律や社会についても検討が必要です。ベルリンでは政府機関の設備で開催したにもかかわらず確かにあまり多くの政府関係者が参加したわけではありませんでした。この辺りは日本開催をする際のバランスに関する考慮点となるでしょう。

SIDI Hub was founded to unite global audiences to define the users, benefits, and overall business case for globally interoperable digital identity to normalize approaches and define minimum requirements. It was, therefore, somewhat premature to attempt a solution-oriented agenda. With that said, the lessons were valuable, and SIDI Hub has had valuable contributions from European stakeholders through other avenues, e.g., the SIDI Paris Summit, eIDAS 2.0 documentation, etc. Regardless, the SIDI organizers have determined that baseline government participation will be a critical go/no-go criterion for the events planned in Washington, D.C., Tokyo, and Brazil.

SIDI Hubは、世界中のオーディエンスをまとめ、世界規模で相互運用可能なデジタルIDのユーザー、利点、全体的なビジネスケースを定義し、アプローチを標準化し、最低限の要件を定義するために設立されました。そのため、ソリューション志向のアジェンダを試みるには時期尚早でした。とはいえ、そこから得られた教訓は貴重であり、SIDIハブは、SIDIパリサミットやeIDAS 2.0文書など、他の手段を通じて欧州の利害関係者から貴重な貢献を得ることができました。それでも、SIDIの主催者は、ワシントンD.C.、東京、ブラジルで計画されているイベントについては、政府の基本的な参加が実施の可否を決定する重要な基準となると判断しました。

ベルリンでもユースケースの取りまとめ要件整備を行いました。次のワシントンDCや東京・ブラジルでの開催に向けて議論をしていく必要がありそうです。なお、ここに記載がある通りソリューションとして自立させるためのきっかけには早すぎるイメージはありました。しかし読者の皆さんは気にせずにアプライしてくださいね。