2024年10月8日火曜日

SIDI Hub - ベルリンレポートを読む(4)

こんにちは、富士榮です。

引き続きSIDI Hubベルリンイベントのレポートを見ていきます。


今回はユースケース分析です。相互運用性を目指しましょう、といっても具体的なユースケースを見つけてボトムアップで考えていかないと進まないので、このワークストリームでは有用なユースケースを各地域ごとに発見して分析して行きます。

Champion Use Cases: Process and Progress to Date - Elizabeth



The Champion Use Case workstream is in the process of identifying champion use cases and then prioritizing using an agreed framework. In Berlin, the Champion Use Cases workstream sought to do three things throughout the day:
  1. Ground Minimum Requirements conversations in salient use cases
  2. Add more use cases and more texture to the data already gathered
  3. Gain input on prioritization criteria

チャンピオン・ユースケース・ワークストリームは、チャンピオンのユースケースを特定し、合意されたフレームワークを用いて優先順位を決定しているところである。ベルリンでは、チャンピオン・ユースケース・ワークストリームは、一日を通して3つのことを行おうとした:

  1. 重要なユースケースにおける最低要件の会話の基礎固め
  2. より多くのユースケースを追加し、すでに収集されているデータにさらに質感を加える。
  3. 優先順位付けの基準について意見を得る 

これまでパリ、ケープタウン、ベルリン、ワシントンDC、そして東京の企画を通して見てきていますが、やはりユースケースに関する関心度、優先順位の置き方は地域によってかなり異なるイメージです。その意味で各地域を回りながら状況をヒアリングして回る、というSIDI Hubのアプローチは理にかなっていると思います。(どうしてもUSとEUだけで話が決まっていく傾向がある世界ですし)

つまり、せっかくなのでアジアからも意見を出していかないとダメですよ、ってことです。


Early in the day, we reviewed the inputs from other sources and past SIDI Hub events:

  • Paris Summit and write specific user stories
  • W3C credentials working group
  • EU Wallet use cases
  • EU + US TTP bilateral analysis
  • SIDI Hub Cape Town
  • New input from SIDI Berlin

Wishing to spend the morning on technical requirements, SIDI Hub Berlin grounded further discussions in two use cases: Refugees and Opening a Bank Account. In this early session, presenters reviewed the outputs from the deep dive conducted at SIDI Hub Cape Town.

その日の早い段階で、他の情報源や過去のSIDI Hubイベントからのインプットを見直した:

  • パリサミットと具体的なユーザーストーリーの作成
  • W3Cクレデンシャル・ワーキンググループ
  • EU ウォレットのユースケース
  • EUと米国のTTP二国間分析
  • SIDIハブ・ケープタウン
  • SIDI ベルリンからの新しいインプット

SIDIハブ・ベルリンは、午前中を技術的な要件に費やすことを希望し、2つのユースケースでさらなる議論を行った。「難民」と「銀行口座開設」である。この早いセッションで、発表者はSIDI Hub Cape Townで行われたディープダイブからのアウトプットをレビューした。

ベルリンでは先に書いたようにこれまでの取り組みについて確認し、その後、さらなるテーマの深掘りをしていっています。日本にいると難民のユースケースはリアリティがない人も多いと思いますが、これまで移民を受け入れてきたドイツや欧州諸国においては重要なキーワードなんだと思います。


こちら、難民のユースケースですね。

特徴として、自国の法的な身元証明が受けられない状況にあるので、UNHCRが発行する証明書を利用できるか?というのが大きなポイントになります。これはワシントンDCでも話があり、先日のクィックレビューでも書きましたが、どうしても出生からの流れを含め身元を証明することが困難であり、Identity Verificationをする際の照合先がないところから身分を付与していくことになります。その付与プロセス自体がどこまでの保証レベル(IAL/Identity Assurance Level)を持つのか?テロリストが混入している可能性や身元ロンダリングに悪用されていないかを踏まえて、どこまでVerifierが受け入れることができるのか?人権や人道支援の文脈を含めてどのように判断していくのかは非常に難しい話です。ただ、世界的に助けを求めている人々の数がますます増えている昨今、目を背けるべき案件ではありませんね。


こちらは銀行口座の開設のユースケースです。

こちらも移民のケースにも少々関わってきますが、国境を超えて別の国で銀行口座を開設するのは非常に難しい状態です。KYCが難しいのはもちろん、CDDについても元となる実績情報などが取得しにくい状態にあるので、どうしてもリスクベースで考えるとリジェクトもしくはネガティブな判断が下されがちです。こちらもAML/CFTの観点も踏まえて良い落とし所を作っていく必要がありそうです。


今回はここまでです。

この後、ギャップ分析が続きます。




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