こんにちは、富士榮です。
先日紹介した通り、NIST SP800-63-3の追補版という形で同期可能なクレデンシャルの取り扱いに関する文書がリリースされました。
今回から中身を少し見ていこうと思います。
しかし、ちょうど最近iOSやmacOSの共有パスワードグループでAirDrop環境外でもパスワードに加えてパスキーまで共有ができるようになった、というアナウンスが界隈では話題に上りました。なんだか単純な同期の話だけでは済まなくなってきてしまった気もしますが、この機能がこのガイドラインにどのような影響を与えるのかは継続ウォッチということで、まずはガイドライン(追補版)を見ていきましょう。
参考)共有パスワードグループ
Introduction
NIST デジタル ID ガイドラインは、ID 証明、認証、およびフェデレーションを 含む、デジタル ID のプロセスと技術要件を規定している。NIST 特別刊行物(SP)800-63B(SP 800-63-3 に関連する第 B 巻)は、認証およびライフサイクル管理 の要件を特に取り上げている。改訂 3 は、このガイドラインの最新の大幅な改訂であり、2017 年 6 月に発行された。シリーズ全体の更新が進行中であり、改訂 4 で完結する予定であるが、技術のペースは NIST の典型的な文書開発およびレビューのプロセスよりも速いため、この補足的な更新が正当化される。SP 800-63B で扱われるこのような認証タイプは、多要素暗号認証である。通常、この認証タイプは、ハードウェアまたはソフトウェアで暗号鍵を保護し、第 2 の認証要素(記憶された秘密またはバイオメトリック特性のいずれか)による起動を必要とする。秘密鍵を不正な暴露から保護することは、多要素暗号認証機のセキュリティ・モデルの基本である。これには従来、秘密鍵がエクスポートまたはクローン可能でないことを保証することが含まれる。しかし、このパラダイムは変わり始めている。特に、新しい一連の認証プロトコルと仕様により、同期可能な認証子(一般に「パスキー」と呼ばれる)が急速に採用されるようになり、ユーザが異なるデバイス間で秘密鍵を同期(つまり、 複製)できるようになった。SP 800-63-3 が 2017 年に発行されたとき、2 つの重要なサポート仕様である Fast Identity Online (FIDO) Client to Authenticator Protocol (CTAP) と W3C の Web Authentication(一緒に使用される場合は FIDO2 として知られる)は存在せず、実装の強固でよく理解されたエコシステムもなかった。当時利用可能であった暗号認証の種類に基づき、2017年のガイドラインは、多要素暗号認証が他のデバイスに鍵を「クローン」する能力を制限した。しかし、この2年間でエコシステムは急速に加速し、現在ではほとんどの主要なプラットフォーム・プロバイダが、スケーラブルで同期可能な認証機能を実装している。これらの認証機能は、耐フィッシング性のサポート、特定の依拠当事者にバインドする機能、パスワー ドを送信する必要性の排除、認証機能のリカバリの簡素化、保存された秘密鍵に付随する第 2 要素とし ての多様なデバイス固有の生体認証および PIN の使用など、多くの利点を提供する。また、ますますマルチデバイス、マルチプラットフォーム化する世界に適合する利便性も提供する。どのような新しい技術もそうであるように、技術革新の約束には、探求し理解しなければならない新たな脅威と課題が伴う。そのため、この補遺では、連邦機関が同期可能な認証機能を実装するかどうか、またどのように実装す るかを決定する際に、現代の脅威を含めて考慮すべき事項の概要を示す。
まぁ、先日のポストにも書いた通り、時代が変わったのでver.4を待たずに追補版で同期可能なパスキーに関してちゃんと分析して考慮をしよう、という話です。
次に文書の目的です。
Purpose
この文書の目的は、変化する認証およびクレデンシャルの市場を反映するために、現行の NIST ガイドラインを適合させることである。この補足では、SP 800-63-3 で確立された認証保証レベルと一致する方法で、同期可能な認証機能がどのように脅威を軽減するかを説明し、SP 800-63-3 認証保証レベル 2(AAL2)を達成するために活用できる同期可能な認証機能の理解を連邦機関に提供する。また、SP 800-63B の第 5.1.8 節で説明されているソフトウェア暗号化認証子の使用に関する最新情報、 特に、鍵が別のデバイスに複製(例えば、「クローン」または「同期」)された場合でも、当該認証子が AAL2 認証要件をサポートする能力についても提供する。最後に、本文書は、公衆向けアプリケーション(すなわち、OMB Memorandum M-19-17 に記 載されているように、公衆 ID と相互作用する連邦情報システム)と連邦エンタープライズ・ アプリケーション(すなわち、OMB Memorandum M19-17 に記載されているように、主に連邦エ ンタープライズ ID と相互作用する連邦情報システム)という 2 つのユースケースに基づ いて、実装に関するいくつかの考慮事項を示す。この文書は、SP 800-63-3 にある既存のガイダンスを補足するものであり、SP 800-63B-4 の最終版に取って代わられる。
記載の通りですが、同期可能であってもAAL2を達成できることを説明するための資料になっているってことですね。また、当然ですが最終的にはver.4へ統合されていく文書というわけです。
ということで、ちょっと長めのシリーズになりそうですが徐々に見ていきたいと思いますので、今回はここまでです。
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