こんにちは、富士榮です。
引き続きAAMVAのMobile Drivers License Implementation Guidelines 1.4を読んでいきます。
まだまだプライバシーの章が続きます。
4.5. DELETING MDL INFORMATION FROM A DEVICE
An mDL holder must have the capability to delete the mDL holder’s mDL from the mDL holder’s device. Such deletion:
- Must delete all mDL information, log information, and any metadata (e.g. settings) that could impart information about the deleted mDL or its use.
- Must not require approval by the Issuing Authority.
- Must be an option available to an mDL holder on the mDL device
- Must be possible when the mDL device is offline.
- Should be available to an mDL holder via a request to the Issuing Authority (see below).
mDL保持者は、mDL保持者のデバイスからmDL保持者のmDLを削除する機能を持たなければならない。
- すべてのmDL情報、ログ情報、および削除されたmDLまたはその使用に関する情報を与える可能性のあるメタデータ(設定など)を削除すること
- 発行機関の承認を必要としないこと。
- mDLデバイス上でmDL保持者が利用可能なオプションであること。
- mDLデバイスがオフラインのときに可能であること。
- 発行機関(下記参照)へのリクエストにより、mDL保持者が利用可能であること。
デバイスからmDL情報を削除する際の話です。基本的に利用者が自身で削除をすることができること(その際に発行者の承認や接続が不要であること)が求められています。難しいところですね。この章の中で発行したmDL関連情報が適切に扱われていること発行機関が責任をもって確認することが求められる一方で利用者の権利も守らないといけないわけです。まぁ、最低限ウォレット開発者が悪意を持って利用者のデータを扱えないように、というところまでは守りましょう、ってところですね。
Should an mDL device (i.e. a device containing an mDL) be lost or get stolen, it could be beneficial for the mDL holder to have the mDL remotely deleted (or temporarily suspended) by the Issuing Authority. Besides the obvious advantage to the mDL holder, other considerations apply too:
- The mDL holder’s request must be authenticated. It must not be possible for someone other than the mDL holder or the Issuing Authority to delete (or suspend) an mDL.
- A “push” capability (from the Issuing Authority to the mDL device) is needed for immediate deletion (or suspension) (see section 6).
- Successful deletion (or suspension) depends on network connectivity to the mDL device
- The mDL will automatically become unusable (although potentially not inaccessible) when the MSO expires (see section 6).
mDLデバイス(mDLを含むデバイス)が紛失または盗難に遭った場合、発行機関によってmDLがリモートで削除(または一時的に停止)されることは、mDL保有者にとって有益です。mDL保有者にとっての明らかな利点の他に、他の考慮事項も適用されます:
- mDL保有者の要求は認証されなければならない。mDL保持者の要求は認証されなければならない。mDL保持者または発行機関以外の者がmDLを削除(または一時停止)することはできない。
- 即時削除(または一時停止)には、(発行局からmDLデバイスへの)「プッシュ」機能が必要である(セクション6参照)
- 削除(または一時停止)の成功は、mDLデバイスへのネットワーク接続に依存します。
- MSOの有効期限が切れると、mDLは自動的に使用できなくなる(アクセスできなくなる可能性はないが)(セクション6参照)。
やはりスマートフォンベースの話なので当然紛失や盗難に関する考慮は十分に必要です。
mDLを利用するときはちゃんと認証するのは当たり前として、発行者から発行済みのクレデンシャルをプッシュ等を使って削除できるようにする、また有効期限切れたらウォレット側で自動的に使えなくする、などもちゃんと気を使う必要があります。
In addition, mDL deletion may be needed when an mDL holder wants to transfer an mDL to a new device, when a person moves to another jurisdiction, or when a person dies.
Issuing Authorities should weigh the benefits and challenges associated with a remote delete (or suspension) capability when considering its implementation (see Appendix A).
An mDL holder must have the capability to delete activity log information (as defined in section 4.4) the mDL holder may previously have elected to maintain. It is recommended that this capability allows selective deletion (i.e. specific log entries, rather than only an “all or nothing” option).
さらに、mDLの削除は、mDL保持者が新しいデバイスにmDLを移したい場合、別の管轄区域に移動する場合、またはmDL保持者が死亡した場合に必要となる可能性がある。
発行局は、リモート削除(または一時停止)機能の導入を検討する際、その利点と課題を比較検討する必要がある(付録A参照)。
mDL保持者は、mDL保持者が以前に保持することを選択した活動ログ情報(第4.4項に定義)を削除する機能を持たなければならない。この機能により、選択的な削除(すなわち、「全削除」オプションのみではなく、特定のログエントリーの削除)を可能にすることが推奨される。
mDLを含めデジタルデータを持ち主だけが制御できるようにするのは大切な一方で死亡した場合などの考慮は非常に重要です。マイナンバーカードと保険証の統合をした結果、意識のない救急患者の保険者資格の確認ができない、なんて話も聞きますが、この辺りは例外処理も含めてちゃんとプロセス設計をしておくのが大切です。
また、ログの削除に関しても選択的に削除することができるようにすべきである、などかなり細かくガイドされている感じがあります。
4.6. NO TRACKING
“Tracking” is the act of compiling information about an mDL holder and/or an mDL holder’s activity. Any stakeholder (including Issuing Authorities, technology providers, service providers and mDL verifiers) must not track mDL holders or the usage of any mDL except as required by law (e.g. when a drug store dispenses products containing ephedrine).
「トラッキング」とは、mDL保持者および/またはmDL保持者の活動に関する情報を収集する行為を指します。いかなるステークホルダー(発行局、テクノロジープロバイダー、サービスプロバイダー、mDLベリファイアーを含む)も、法律で義務付けられている場合(ドラッグストアがエフェドリンを含む製品を調剤する場合など)を除き、mDL保持者やmDLの使用状況を追跡してはなりません。
トラッキングの禁止に関する条項ですね。法的根拠なくトラッキングしてはならない、と。
Tracking by an mDL verifier can be performed as soon as two different mDL transactions can be linked to each other. This can be countered by designing the solution to maximize anonymity (“characteristic of information that does not permit a personally identifiable information principal to be identified directly or indirectly”, from ISO/IEC 29100) and to maximize unlinkability. Anonymity can be hampered by metadata that may be associated with multiple mDL transactions, e.g. hardware or network addresses, long-term public keys, or session tokens. Consequently, Issuing Authorities must minimize the sharing of static or long-lived metadata.
mDL検証者による追跡は、2つの異なるmDLトランザクションが互いにリンクされるとすぐに実行できる。これは、匿名性(「個人を特定できる情報主体が直接的または間接的に特定されない情報の特性」、ISO/IEC 29100より)を最大化し、リンク不能性を最大化するようにソリューションを設計することで対抗できる。匿名性は、複数のmDLトランザクションに関連するメタデータ(ハードウェアやネットワークアドレス、長期公開鍵、セッショントークンなど)によって妨げられる可能性がある。そのため、発行局は静的または長期的なメタデータの共有を最小限に抑える必要がある。
これはSD-JWT-VCでも同じ議論がなされていますが、Verifierの結託によるリンク可能性の話ですね。mdocにおける選択的開示については基本的にSD-JWTと類似の考え方なので単体ではリンク可能性に対する対応はできなかったはずです。そのため匿名性を担保するソリューションを別途検討することが必要とされています。
Although pre-matched transactions hold the promise of maximizing anonymity at a user data level, anonymity in post-matched transactions is limited since the portrait image is always shared. For these transactions it is recommended that Issuing Authorities pursue regulatory protection against tracking by mDL verifiers.
事前照合取引は、ユーザー・データ・レベルでの匿名性を最大化することが期待できるが、事 後照合取引では肖像画像が常に共有されるため、匿名性は制限される。このような取引の場合、発行機関はmDL検証者による追跡を防ぐため、規制による保護を追求することが推奨されます。
Solutions using the server retrieval method also pose challenges in preventing tracking. As per design, the Issuing Authority is involved in real time each time an mDL is used by the mDL holder. The Issuing Authority would technically be able to keep track of when an mDL holder uses his/her mDL and keep track of what data is shared. Based on IP address analysis the Issuing Authority would also be able to track an mDL holder’s physical location to some extent. This can be mitigated by placing regulatory limitations on the Issuing Authority11, and will be of value to the extent an mDL holder trusts the Issuing Authority’s adherence to the regulatory limitations. Consequently, Issuing Authorities considering a server retrieval solution should carefully weigh the advantages of this approach against its privacy implications.
サーバーリトリーバルを使用するソリューションは、追跡を防ぐという課題もある。設計の通り、発行局はmDL保有者がmDLを使用するたびにリアルタイムで関与します。発行局は技術的に、mDL保有者がいつmDLを使用し、どのようなデータが共有されたかを追跡することができます。IPアドレスの分析に基づき、発行局はmDL保持者の物理的な所在地をある程度追跡することもできます。この問題は、発行局に規制上の制限を設けることで緩和することができます11 。そのため、発行局はサーバー検索ソリューションを検討する際、このアプローチの利点とプライバシーへの影響を慎重に比較検討する必要があります。
サーバーリトリーバルは基本的に従来のフェデレーションモデルと同様に発行者への問い合わせが発生するため、トラッキング耐性は低いとされます。この辺りはエコシステムのサイズや参加しているエンティティの関係性などを踏まえて設計していかないといけないポイントですね。
Since the activity log (see section 4.4) contains a full record of when and potentially where an mDL was used, it is reiterated that access to the activity log must not be possible by anyone other than the mDL holder.
アクティビティログ(4.4項参照)には、mDLがいつ、どこで使用されたかについての完全な記録が含まれるため、mDL保持者以外の者がアクティビティログにアクセスできないようにする必要があります。
今日もこの辺りにしておきましょう。
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